二人っきりの時間を

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 自分の体力が温存出来る事にほっとしながらも、俺は顔を赤らめてその条件を飲む事にした。 「っ……わかった。じゃあ明日ちゃんとデート行くから、機嫌直してくれ」 「あぁ、すっかり直った」    現金だな……  明日のデートが決まると、何事もなかったように上機嫌になった尋政。彼を見て、俺は呆れたように笑みを溢した。  けど、今日でデートが終わりじゃないのは俺にとっても救いかもしれない。そう思った。  ─ ─ ─ ──── 「音富くん、指大丈夫だった?」 「うん、ちゃんと冷やしたから平気だよ」  尋政と席に戻れば、俺の答えを聞いた葵璃絵ちゃんは「良かったー!」と胸を押さえていた。 「小ブタは鈍臭いんだから、尋政さんに迷惑掛けないようにしろよ」 「き、気を付けます」  兎月さんも心配はしてくれているんだろうが、言い方はきつい。けれど、彼が俺に差し出してくれた皿には、食欲がそそられる程の大量の肉が乗っていた。 「ほら、わざわざ焼けたの取っておいたんだから、残さず食べろよな」 「えっ、こんなにっ! あ、ありがとうございます、いただきます!」  分厚いステーキみたいな肉にレモンを滴し口に運べば、軟らかな食感と上品な油で天国に(いざな)われるみたいだった。 「こ、こんな良い肉食べたことない……すごく美味しいです」 「小ブタじゃなかなか手は届かないだろ。今日は尋政さんに感謝して、遠慮なく食べろよ」  お酒が入っているからか、彼はご満悦のようだ。俺が肉を頬張る姿を、兎月さんは満足そうに眺めていた。  すると、俺の目の前には別の肉が盛られた皿が置かれた。 「音富、これも美味しいぞ」 「あっ、ありがとうひろま……」  何だろ、その勝ち誇ったような表情は。しかもそれは、俺にじゃなくて兎月さんに向けられたものだ。 「小ブタには俺が肉あげるんで、尋政さんは気にせず食べてください」 「いや。俺は音富と住んでるから、音富の面倒なら俺が見るぞ?」  若干、住んでいるって単語を尋政は強調していた。尋政は兎月さんの事を敵視し過ぎなんじゃと思うが、口には出せない。
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