二人っきりの時間を

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「菓子メーカーの社長で、そこのキャラクターとのコラボもあるのに、行った事がないのも失礼な気がするからな」 「あー、クッキーとかチョコ出してるよね」  尋政もトングを使い、焼けた肉を俺の皿に乗せてくれた。 「それに、前々から興味があって……初めて行くならお前と一緒が良いと思っていた」 「っ!」  そう言われたら、反対なんて出来ない。行くに決まってる。照れを誤魔化すように、俺は肉を口に運んだ。 「わかった。じゃあ明日行こう。俺は初めてじゃないから、尋政を案内してあげられるし」 「それは頼もしいな」 「でも、俺が最後に行ったのは高校生の時だからな……昔と変わってるかも」 「それも新しい発見があって良いんじゃないか。俺の場合、子供の頃からそういう場所には無縁だったから、とても興味深いぞ」 「えっ……もしかして、今まで遊園地とかテーマパークとか行ったことないの?」 「一度もない」  何か、見えないものに纏わり付かれて鬱陶しい。尋政はそんな表情で自分の手元を見ていた。 「それも、羽隅家のつまらない風習やしきたりのひとつだ。昔から、次期当主になるべき子供は家に縛られる。交流を持てるのは同世代の従者一族の子供で、外部の人間との接触は禁じられている」  何もかも諦めてきたような冷めた目で、尋政は過去を語っていた。 「学生時代に友人と遊びに出掛けたりは疎か、学校行事にも出させてもらえなかった。それが高校卒業までずっとだ。だから、そういう話はいつも従者達から聞いてたんだ。特に小歌家の連中から。それが外の娯楽を知る情報源で、楽しみだった」 「……知らなかった。でも、高校卒業してからは自由だったんだろ?」 「いや……大学入ってからは会社を継ぐ為の教育をいろいろ受けた。頭に入れられる事は何でも頭に入れる。遊ぶ暇なんてなかった。息抜きは、本家でたまにある茶会でお前とカステラを食べたり、お前の話を聞く事だったが」
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