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「参ったな……」
尋政も片手で顔を覆って、うつ向いてしまった。
かっこつけて言うんじゃなかった。こんな、死亡フラグ立てるみたいな台詞。
─ ─ ─ ────
あれから、俺としては微妙な空気感で食事を終えたつもりだった。帰ったらさっさとシャワーを浴びて、明日に備えて眠る予定だったのに……
「ちょっ、尋政!? 何いきなりっ!?」
「暴れるな、ベットに着く前に腰を痛めるぞ」
タクシーから降りて自宅の玄関に入れば、突然尋政に抱き抱えられてしまった。彼の表情は笑みを浮かべている。
まさか、お姫様抱っこを描く側がされる側になるなんて。抱っこする側にだって絶対なれないのに。
尋政は軽々と俺を二階まで運び、寝室に入ると俺をベットに下ろした。
「今日は軽めにするつもりだったのに、そうはしてやれないかもしれない」
「はぁっ!? 何で!?」
「だって……」
これから起こる事を想像し、茹でダコのような真っ赤な顔で、話が違うと文句を付けようとした。
そんな俺の頬を、彼は慈しむように撫でた。
「そう抱かないと、俺の気が済まない。こんなに嬉しかったことは、今までにないからな」
「え? んぅっ!」
唇を押し付けられ、熱い感覚が伝わる。俺の唇を割って入ってくる彼の舌が、俺を徐々に夢見心地な気分にしていく。比例するように、体も柔らかなベットに沈む。
「はぁ、んんっ……ぁっ!」
キスだけで蕩け、彼の指が俺の肌に触れるだけで理性が奪われた。生まれたままの姿にされ、指先でなぞるように胸元を撫でられると、俺の体はそれだけで跳ねた。
「その反応、お前が欲しくて欲しくて堪らなくなる」
「ぁっ、んぁあっ!」
恥じらいの感情なんて翔ぶ程、俺は尋政によって乱され嬌声のような声を上げた。俺の中を蠢く彼が、いつにも増して強く激しい。
「ぁっ、ぁ……! 尋政っ!」
「これでも、足りないなっ」
「ひぁっ、あっ!」
何度も揺さぶられて、ベットの軋む音が激しさを物語っていた。激しすぎて我慢出来なくて、俺まで彼を求めるように腰を揺らした。
やっぱり、あんな言葉言うんじゃなかった。
後の事を考えもせず、お互いの熱が冷めるまで、俺は彼を求め続けていった。
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