285人が本棚に入れています
本棚に追加
尋政の記念日は俺の記念日でもあるから、ちゃんとした写真を残したい。照れくささを感じて微笑みながら、俺は心の中でささやかな幸せを感じた。
シャッター音が鳴ると、スマホに映っていたのは微笑む恋人同士だった。
「良い写真だな、後でメールで送る」
「ありがとう。じゃあ奥に進もう。もっと尋政に紹介したい所がいっぱいあるから」
「それは楽しみだ」
始まったばかりのデート。周りに居る他の人間が気にならない程、この時間は特別だった。
─ ─ ─ ────
バイキングレストランでそれぞれの好みが出る食事をして、漫画用に建物等の写真を撮って。それから……
「うわっ、待って速っ!!」
「っ」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
コースを猛スピードでグネグネ進むジェットコースターに二人で乗り込んだ。俺は涙目になりながらかなり叫んでいたが、隣の尋政からは叫び声ひとつ聞こえない。怖過ぎてビビっていたのかと思ったけど、終わった後。
「……もう一回乗らないか?」
「えっ!?」
「もう一回」
彼は初ジェットコースターが余程お気に召したのか、数種類のジェットコースターを計五回乗った。乗り終わった後の俺はヘロヘロだったのに、彼の目はとてもイキイキしていた。
「何が楽しいんだと思っていたが、乗ってみるもんだな」
「尋政があんなにハマるとは思わなかったよ」
休憩にパーク限定のフルーツティーを手渡してくれた尋政と、隣同士でベンチに座った。フルーツティーの甘みで、さっきまでの刺激的な疲労が引いていく。
「俺も絶叫系は嫌いじゃないけど、あんなに乗ると結構きついかも……」
「そうか? 俺はすごく爽快だったが。お前には無理をさせたみたいだな。音富はここでしたい事はないのか?」
「したい事か……あ、葉街さん達にお土産買って帰りたいかな」
お土産屋が目に入ってその方向を指差せば、尋政は怪しむように目を細めた。
最初のコメントを投稿しよう!