幸福を感じて

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 ちょうど煎餅と饅頭のセットを見付けて、それを二箱手に取った処。尋政の低い声が、不気味に俺の背中を撫でた。 「い、良いだろ別に! 俺自分のお金で買うし!」 「節約してるんじゃないのか?」 「何で知って……あ、いや。そ、そこまで徹底してる訳じゃないし、それにお土産買うのにケチったりは……」  すると、話を遮るように尋政のジャケットから着信音が鳴り響いた。 「誰だこんな時に……」 「あ、気にせず出ていいよ。急な用事かもしれないし。俺はお土産買っておくから」 「……仕方ない。外で待ってる」  一瞬ヒヤッとした。が、今の内にと、フルーツ好きな葵璃絵ちゃんの為に瓶詰めの飴もカゴに入れた。ついでに機嫌取る用で、昔からカレーライス好きな尋政にはカレー味のスナックも買った。  急な電話で尋政は側には居なかったけど、彼の知り合いにお土産を買うのもなかなか楽しい。  後は、自分用に何か残るものを買おうとキーホルダーなんかに目を向けたが、これといって惹かれる物がない。  この前見たオウル製菓のフクフク限定マグカップを買う為に、今日は我慢するか。  手早くレジを済ませ、ショッピングバックを手に持って外へと向かった。尋政の目を盗んで兎月さんと葵璃絵ちゃんのお土産を買えて、俺は一安心。尋政とのデートも大成功して、思い残す事はなかった。  店を出て尋政を探すと、彼は近くのベンチに腰掛けていた。 「尋政! 買い物終わっ……た、けど……」 「そうか」  さっきまで楽しそうだったのに、今の彼にはそんな面影も感じられなかった。数分離れていただけで、どうしてこんなにピリピリとした空気を纏う事になるんだ。表情もかなり険しい。 「な、何かあった? 仕事の電話?」  聞いていいものか迷ったけど、今の彼の状態は気になって仕方がない。尋政は首を静かに横に振り、地面を睨み付けていた。 「崇稀だ」 「葉街さんからの電話?」  喧嘩でもしたんだろうか。そんな想像をしていたら、尋政は負の感情が詰まった声を発した。 「本家から呼び出しだ。今すぐ、音富も連れて来るようにと」 「え……」  恋人の実家に呼ばれただけ。それなのに、まるで罪状を宣告されたように心が重くなった。
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