雪の四月朔日

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 説明を受けながら八雲は考えていた。  ゆっくりと辺りを見回すと、野次馬は雪の中、相変わらず現場の方を見ている。  不意に、その中にいた一人と目があった。  被害者と同じ年頃の少女。  コートのフードを目深にかぶり、首元を覆い隠すようにマフラーを巻いている。  そんな彼女に違和感を抱き、八雲は走り出した。 「おい、八雲!」  透が追うが、遅い。  少女のもとへ八雲は滑り込むようにたどり着いた。 「――――っ!?」  驚いた顔の少女。  その瞳の奥には恐怖が映っていた。 「はじめまして、天神八雲と申します。少しだけ、お話を聞いても良いですか?」  少女が感じている恐怖を敏感に読み取った八雲は、笑顔を作り優しい声で問いかける。  眉根を寄せ、困惑しながら悩み、やっと彼女は頷いた。 「勝手に動くな、八雲。鳴神さんたちに迷惑がかかる」  八雲に追い付いた透が声をかける。  その後には鳴神の姿もあった。 「ちょうどよかった、鳴神さん。さっき乗って来た車、少し借りても良いですか? この方とお話しさせていただきたくて」  透を無視し、八雲が鳴神に尋ねる。  名前も知らない少女は大人たちに囲まれ、顔を伏せていた。 「その子、ですか……?」  鳴神が縮こまる少女をちらりと見る。  俯いてしまっているため顔が見えないが、被害者と同じくらいの年頃だということがわかる。 「わかりました、どうぞ。ただ、何かあればすぐに声をかけてください。私が責任を取りますから」  鳴神のなかで結論が出た。  八雲にそう伝えると、彼女に車の鍵を手渡す。  透は何か言いたそうだったが、鳴神が決めたことなので口を出せない。
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