17人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
八雲の直感は正しかったのかもしれない。
鳴神はメモを取りながら黙って少女の話を聞いている。
「桜南高校、ですか」
呟くように口にしたのは八雲だ。
桜南高校は県立高校で、特別有名な進学校ということはない。
どちらかというと、専門学校に進学する生徒が多いくらいだ。
「私の気にしすぎかもしれないんです。でも、昨日の夜から友達……親友と連絡が取れなくて」
気にしすぎかも――と言いながら、李菜には確信があるように見える。
八雲は李菜の話を聞きながら、顎に手を当て考え込んでいた。
「念のため、その子の名前を教えてもらっても」
「いえ。その前に谷崎さん、マフラーを取って貰えませんか?」
黙っている八雲に変わって口を開いた鳴神だが、言い終わる前に八雲が李菜に声をかけた。
「マフラーを取ってください」
二度目のお願いは、命じるような口調で。
八雲の視線を真正面から受け、李菜は気まずそうに視線を逸らした。
きつく巻かれたマフラー。
防寒にしてはおかしい程に、グルグルと厳重に巻かれている。
まるで、首を絞めるように。
「……あなたが、友人を案ずる理由がそのマフラーの下にある。そうでしょう?」
見透かすような八雲の言葉に、李菜の肩が小さく震えた。
断言するような言い方をした八雲だが、実際には賭けだらしい。
「わかりました。マフラー、取ります」
グルグルと首に巻き付けていたマフラーがほどかれる。
マフラーの下、少女の白い喉には浅黒い手形が残っていた。
人の手で首を絞められた――扼頸の痕だ。
くっきりと、残る手の痕。
李菜は何も言えずに俯くだけ。
最初のコメントを投稿しよう!