雪の四月朔日

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 鳴神は何も言わずに車を降りていく。  程無くして、透を連れて戻ってきた。 「すみませんが、病院に向かいます」  運転席に鳴神、助手席に透が乗り込みシートベルトを締める。  李菜の首にある、強く絞められた痕。  手形が残るほどの力で首を絞められたのなら、何らかの後遺症が出てくるかもしれない。  それを危惧した鳴神は、医師である透を呼び一緒に病院に向かうことにしたようだ。  俯いたままの李菜だが、拒否することなくシートベルトを締めた。  諦めにも似た、小さなため息が口から漏れる。  鳴神の運転で向かったのは、有栖川クリニック――透の父が経営する個人病院だ。  クリニックに着くと、透の案内で裏口から入る。  雪のため待合室に患者はほとんどいないが、李菜の様子を見て緊急だと判断したらしい。 「診察と検査は俺と父さんで対応する」 「よろしくお願いします」  今は何ともなくても、後々、症状が出るかもしれない。  しかし、事件に関係するかもしれない少女を下手に大きな病院には連れていけなかった。  それなりの設備があり、すぐに対応してもらえる病院ということで、有栖川クリニックが紹介された。  透から連絡がいっていたようで、透の父が画像検査などの準備をしている。  李菜がレントゲン検査、MRI検査などを受けている間、八雲は待合室で事件のニュースを見ていた。  事件の速報として、切断された身体の一部が市内のY川で見つかったと発表されている。 「谷崎李菜は確かに桜南高校に在籍しています。そして、彼女と仲の良い生徒で所在確認が出来ていない少女がひとり」  少しの間席を外していた鳴神が戻ってきた。  どうやら、学校側に確認を取っていたらしい。
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