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雪の四月朔日
窓の外を見て、天神八雲はそっとため息をつく。
昨夜から降りはじめた雨は雪へと変わり、既に辺りを白く染め上げている。
季節外れの雪は、例年にないほど、降り積もっていた。
外を見るだけで冷えきってしまった身体を温めるため、紅茶の入ったティーポットに電気ケトルから熱湯を注ぐ。
ふわり――湯の中を赤い茶葉が舞い、香りと共に綺麗な紅色へと染めていった。
温めたティーカップへ蒸らした紅茶を注ぐ。
半分ほど注いだところで手を止め、温めておいた牛乳を足した。
そこへ角砂糖を投入していく。
一、二、三……十を越える角砂糖を入れると、カップから紅茶が溢れそうになった。
八雲はこぼさないように一口飲んでから、スプーンでゆっくりとかき混ぜていく。
紅茶の香りに混じる砂糖の甘ったるいにおい。
二口目を飲んだところで、八雲は時計に目を向けた。
時刻は間もなく六時になろうとしている。
八雲の口から再びため息が出た。
先日仕事で依頼されていた鑑定をレポートにまとめていたら、既に夜が明けていたのだ。
(紅茶を飲んだら、メールで結果を送って仮眠しよう……)
八雲はそう考え、残りの紅茶を飲んでいく。
窓の外はまだ、雪が舞っていた。
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