雪の四月朔日

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 仕事用のスマートフォンだろうか。  相手を確認して「失礼します」と断り、電話に出た。  鳴神の電話が終わるのを紅茶を飲みながら待つ。 「市内のY川で被害者のものと思われる手首が発見されました。現在、付近の捜索を進めているようです」  公園で見つかった遺体から持ち去られのは、両手と両足、そして頭部。  同じ市内で同時に遺体の切断事件が起きるとは考えにくいため、同一の被害者だと仮定して捜査が進められているらしい。 「一旦、現場に戻らなくてはならなくなりました。八雲さんも一緒に来て、現場を見てくれませんか?」  鳴神の問い掛け。八雲は捜査に協力することもあるが、事件が起きてすぐの現場に行くことはまれだ。  なかなか糸口の見えない事件を、独自の視点で切り開いていくことが多い。  一月末に起きた碧葉白百合(あおばしらゆり)女学院での事件でも、そうだった。 「わかりました。私が特別なにか出来るとは思えませんけれど、ご一緒します」  碧葉白百合女学院の事件で借りがある手前、断れずに頷く八雲。  ゆっくりと立ち上がると、花怜が上着を持ってきた。  渡されたコートを羽織り、手袋と帽子で寒さ対策をする。  マフラーも渡されたが、やんわりと断った。 「花怜、あなたは残りですよ。亡くなったのは高校生のようですし、犯人が近くにいたら目を付けられるかもしれない」  高校生の花怜に釘を刺すように言う。  女子高生を狙った事件だとするのなら、彼女がターゲットにされる可能性もあるからだ。 「わかってます。先生も気をつけて」  呟くように花怜が答えたのを聞いて、八雲は刑事二人を伴って部屋を出ていく。  花怜は窓越しに三人が車に乗り込むまで見送ると、自分の仕事に取りかかった。
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