雪の四月朔日

6/16

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 稲荷神社公園は、八雲の住むマンションから車で十五分ほど離れた所にある。  運転席に若林、後部座席に鳴神と八雲が座った。 「今わかっていることをお伝えしますね。被害者の死亡推定時刻は本日零時頃。死因は恐らく、頚部圧迫による窒息死。遺体は死後数時間経ってから切断されたようです。その為、出血も殆どありませんでした。詳しくは司法解剖待ちです」  車内で鳴神から事件に関する情報を聞いた八雲。  それから現場の公園に着くまでの間、窓の外の景色を眺めていた。   雪景色の中に現れた赤の群れ。  白く染められた公園に群がる赤は、パトカーの赤色灯だった。  複数ある公園の入口は全て黄色いテープで封鎖され、制服警官が立っている。  雪の中テレビ局のカメラマンや、野次馬が遠巻きに公園を見ていた。  公園内の駐車場にはパトカーを含む警察車両がたくさん停まっている。  空いているスペースに駐車し、三人は車を降りた。 「現場に案内します。足元、気を付けてください」  駐車場は車や人の出入りがあるためか、雪はあまり積もっていないが公園内の遊歩道はそうでもない。  咲き始めた桜の花びらと共に舞う雪は、パトカーの赤色灯に照らされて赤く染まっている。 「こんなに積もるほど雪が降るのは何年ぶりでしょうか……」  八雲は慣れない雪道を一歩一歩ゆっくりと踏み出す。  茨城県でも県南地域にある学園都市は、冬でも雪がほとんど降らない。  降ったとしても、積もるのは稀だ。 「ここから、遊歩道から外れた道になります」  遊歩道の途中、両側に植えられた低木の垣根が切れた所から、幾つもの足跡が続いている。  それを追うように鳴神たちが先を行く。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加