Prolog

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Prolog

 三月三十一日。それは少女たちにとって、高校二年生の最後の日だった。  四月に入ればすぐに始業式があり、彼女たちは三年生へと進級する。  高校生活も残り一年。来年の今頃は高校を卒業し、新生活をスタートしているはずだ。  灰色に染まった空が泣き出し、ポツポツと雨粒がアスファルトに染み込んでいった。  冷たい雨は少女たちの身体から熱を奪っていく。  雨の中、(もつ)れるように倒れ込んだ二人の少女。  その熱を奪われた冷たい指先が、もう一人の喉に触れる。  触れられた少女は、喉を通して伝わる手の冷たさに身体を硬くした。  次第に彼女の細い指が皮膚に食い込んでくる。  ゆっくりと絞め上げられる首。  抵抗しようとしても、冷たい雨に体力を奪われて大した抵抗にならない。  その間にも指はきつく食い込んでいく。  締め上げられた喉。少女の視界はぼやけ、霞んだ。 「どう、して……」  唇からこぼれた言葉。  それすらも霞み、相手に届いたかはわからない。  嗚呼、次第に彼女の意識も闇に溶けていく……。
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