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「なぁ、そこの姉ちゃん? ちょっと金貸してくれない?」
背後から、肩を掴まれてそう声をかけられた。チャラチャラした若い男の声、平然とボディタッチをする態度、そして今の言葉。認めたくないけれど、体が一瞬ぶるりと震えた。
「おいおい、つれないねぇ、姉ちゃん。こんな夜遅くにプラットホームで一人でいたら、そりゃ心配して、声をかけたくなるもんだぜ」
へへっ、と男は笑った。私は意を決して振り返り、にやにやした顔で私を見るその男に強い口調で言い放った。
「何ですか。話しかけてこないでください。警察呼びますよ?」
それはどこかで学んだ、質の悪い男を撃退するときの常套句だった。これで諦めてくれるだろうと思ったが、男はまだしつこく私に話しかけてきた。
「へっ、何だよ可愛くねえ。自分の気持ちが全然出てねえぞ。困ってる人を目の前にして見捨てる気かい?」
「し、しつこいです。本当に警察呼びますよ? あなたにあげるお金なんてありません」
「何だ? 姉ちゃんも金持ってねぇのか。貧乏だな」
「も、もう何なのですか……」
本当に、どうして最近嫌なことばかり続くのだろう。私は心からそう思った。
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