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はじまり
「4次元ホール展開!内部解放開始!!」
コンクリート製の重厚感ある場内にそびえ立つ、8本のアームの中心には、周りの空間との境界が視認できる、直径10m程の透明な球体が浮いている。その外形は、内側で強風が吹き荒れているかのように、激しく波打っている。
「第一調査隊準備よし!位置につけ!!」
前頭に立つ長官の掛け声に合わせ、重装備を身につけた10名の隊員が整列する。
「いいか!調査時間は15分だ。このホールは20分後には閉じる。
初回は予定通り2班に分かれ、ホールより半径100m以内を探索。
15分後には定位置に戻り、全隊員揃って同時に帰還する。
目に映ったもの、確認したものについては期間後に私に報告するまでは
他言は許されない。このミッションは特Aレベルである。良いか!」
「ハイっ!」
10名の声が綺麗に揃う。
「5次元展開まで5秒前…」
アナウンスとともに球体は光を帯び、中心部は直視できないほど明るくなる。
5…4…3…2…1…展開!
一瞬、場内が光で満たされると、すぐに元の明るさに戻る。ただ1つ先程までと異なるのは、透明だった球体の中に景色が見えることだった。そこには、荒れ果てた荒野が広がっていた。
「前進開始!!」
長官がそういうと、一隊は球体の中へと消えていった。
ー3年後ー
「クニミヤ遅いぞ!早く並べよ!」
2m近い背丈の大柄の青年が男に向かって大げさに手招いている。
「お前はいつもビビり過ぎなんだよ、何のためのデカさなんだか。」
國宮がそういうと、大柄な男は申し訳なさそうに肩をすくめる。
「しかしよクニミヤ。まだこの光景には慣れないな。最初見たときよりは幾分マシだが。」
「慣れない方がいいさ。慣れほど怖いものはない。」
2人を含めて大勢が集る宮殿は、洗練された和の雰囲気を漂わせつつも、新しい時代を感じさせる見事なものだった。その正面中央には、群衆を見下ろす形で舞台が設置されており、中央にスペースを空けて主催者の取り巻きがビシリと直立している。皆の視点がその空いたスペースに注がれる中、宮殿全体の空間を制圧するように、銅鑼(どら)の音が鳴り響いた。
「ただいまより、国龍式(こくりゅうしき)を行います。全員注目!!」
アナウンスの声に合わせて、尺八や鈴を用いた壮大な音楽が流れ出す。
「お出ましだぞ。」
國宮がそういうと、宮殿の奥からゆっくりと主役が顔を出した。
群衆は弾けんばかりの拍手を持って迎え入れる。中にはうっとりとした顔をして祈るように見つめる者もいる。
無理もない。そこに現れたのは、背丈が6mほどはあろうかという、
世にも美しい“白龍”の姿であった。
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