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訃報
それは、突然の連絡だった。
「父が、副島ダイサクが、今朝亡くなったの……」
「え? お父さん、が……?」
姉からの報せに、わたしは言葉を失った。父と一緒に暮らした事は無かったけれど。初めて会った時も、父は優しい言葉をかけてくれた。その人が今日、いなくなってしまった。
目の前が真っ暗になる。わたしは本当に、ひとりぼっちになってしまったんだ。
「それで、サトエさん。今から、家に来れないかしら? その、相続の話もあるし……」
「……分かりました。すぐに、向かいます」
相続など、どうでもいい。わたしはただ、父に会いたかった。
はやる気持ちを抑え、姉に言われるまま、副島家の住所をメモする。今はまだ正午を少し過ぎたところ。時間は十分にある。新幹線で東京まで向かえば今日中に副島の家に着く。父の最後の姿を見る事が出来るのだ。
「待っていてね。お父さん……」
式に参列出来るかは、分からないけれど。ガーメントバッグに喪服をつめると、ろくな荷物も持たずに家を後にした。
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