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沼田との密会の後、秋山は教室に向かった。扉を開けると、何人かの女子が中央に席を寄せている。
どうやらまだ、入りもしない犯人を真剣に探しているらしい。各々の顔つきがそれを証明していた。
もっとも、秋山にとってはその顔つき自体が滑稽でたまらなかった。
こみ上げる笑いを抑え、秋山は自分の席に向かう。
一息つき、昨日と同じく適当にノートを広げると。
「おい、秋山ちょっと来いよ」
扉を豪快に開き、滝川が顔を覗かせた。側には勝ち誇った笑みを浮かべる、沼田が居る。
そう来たか。さっき話したあと、たまたま滝川と会って、それで話したことを全部言ったのだろう。
「おい、秋山! さっさと来いよ!」
にやつく滝川を尻目に、秋山は対滝川の立ち回りを、顎に手を当て考えた。焦るな。そう自分に言い聞かせた。
「ふんっ、そんなに来たくないんだったらこっちから行ってやる。
わざと足音を大きく鳴らし、滝川が席に到達した。
「ちょ、痛い、やめてよ」
秋山の抵抗虚しく、滝川に制服の裾を荒く掴まれ、廊下に連れ去っていった。
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