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「で、どう言うことなんだよ。俺のダチが不幸になるって」
秋山は人が寄り付かな屋上に連れ去られた。初冬の風がやけに冷たい。
「理由は言えない。けれど沼田は今日中に不幸に陥るよ」
動揺を隠さずに、秋山は一息で言った。
「ふーん。じゃあさ仮にお前が沼田の運気を操れるとして、なんでそんな事するのよ」
的を得た滝川の問いに、秋山は押しだまった。それを囃し立てるように、沼田が続く。
「本当は嘘なんだろ。俺の運勢を操れるとか、冷静に考えたら、ありえない話だ」
沼田の発言に滝川も太い首を縦に降った。
「そういうことだな。結局お前は俺と沼田の中を妬んでたんだろ」
そう言うと滝川は、哀れみとも取れるニヤケ面を浮かべ、滝川は思いっきり秋山のみぞに蹴りを加えた。
腹の底から湧き上がる激痛に、自然と頭は地べたに落ちる。
「へっ、これで成敗完了だな。行こうぜ」
「うん、ごめんね滝川くん、迷惑かけちゃって」
「良いってことよ、それよりもまたこいつが絡んできたら、俺に言えよ。すぐに駆けつけてやる」
「ありがとう。でも大丈夫だよ。滝川くんのキックを喰らって、もうこいつ立ち上がらなそうだし」
「それもそうだな。それよろ早く教室に戻ろうぜ、授業も始まるし、こんなところにいたら先生にも見つかっちまうし」
未だ悶絶する秋山を尻目に、二人は階段を降ろうとした。その矢先に。
ドコッ。
何かが砕け散るような音が聞こえた。
何が起きた。まだ朦朧としている意識を太ももに集中させ、なんとか立ち上がる。刹那、滝川の悲鳴が秋山の耳をつんざく。
「ぬ、沼田! 大丈夫か」
必死に秋山が駆け寄ると、そこには階段から転げ落ちた沼田の体が、わずかに痙攣しながらそこにあった。
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