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沈んでいく夕日に向かって秋山は足を進める。その後ろ姿を追いかけるように、大きな足音が聞こえてきた。
その足音は、秋山の背後に止まり辺りに怒声を散らす。
「おい、ちょっと待てよ!」
「なんだ、滝川か。なんか用?」
一瞬後ろを振り返り、口元で囁いた。足を進める秋山の腕を血管が浮き出るくらい強く掴んだ。
「なんでお前さっき俺のこと庇ったんだよ」
「だって滝川は沼田のこと突き落としてないんでしょ?」
秋山は誓って真面目な口調で言う。
滝川の目にはきっと悪意に染まった顔が映っている。
「俺は突き落としてねぇ! 確かにあの時は沼田が勝手に落ちた。だけどお前があんな話をした後だ、関係ないようには思えない」
滝川の言葉に、秋山は黙った。しばらく唸ったあと、秋山は別方向に顎をしゃくる。
「場所を変えよう。ここでは話せない話だ」
秋山はさっき歩んでいた道とは、逆の方向に歩みを進めた。滝川は慌てて秋山の背を追う。
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