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「こんな所で話か?」
古ぼけた鳥居をくぐるのとほぼ同時に滝川が不気味そうに口を開いた。
「ここなら誰も寄り付かないしな」
数年前から神主が死んで所有者が居なくなった神社。数年前からは幽霊が出るという噂も出始めて、さらに人気が少なくなっている。
社殿の階段の一番上に秋山は座った。それに倣うように、滝川も一段下に腰を下ろす。夕日の光も相まって中々ノスタルジックな雰囲気だ。
「で、なんだよ聞かれたくない話って」
滝川が感情を抑えた声色で核心に迫った質問を投げかける。秋山は滑らかに口を動かした。
「悪魔だよ。君たちに虐められていた僕は、悪魔と契約して、君たちを不幸に陥れたんだ。こんなことになるとは思わなかったけど」
滝川が顔を持ち上げ、秋山の顔を見つめる。
「なんだよその話、この期におよんで妄想か?」
「本当の話だよ。僕だってどうしたらいいのか分からない」
悲観の表情を浮かべる秋山に、滝川は表情を曇らせた。
「もしかして佐藤の机のやつもお前?」
「実行犯は僕じゃない! 僕は何もしてない!」
「なんなんだよお前!!」
その言葉を最後に、滝川は秋山の首に飛びかかった。太い腕が秋山の首を貪る。
「お前のふざけた理由で沼田は死にそうになった。佐藤だって心に傷を負ったはずだ!」
滝川の太い腕がさらに秋山の首に食い込む。秋山は声にならない声を上げた。
「なんだよ、こないだまで僕ののこといじめていて、今度は正義の味方か!? 良い気分だよなクラスのリーダー様は!」
若干滝川優勢のまま、二人が取っ組み合っていると。
突然だった。二人の中を引き裂く大きな音が境内に響く。
「クラスメイトをいじめて、その次は殺人か、人間のいじめは怖いねぇ〜」
即座に秋山の首から手を離し、滝川は鳥居の方に目を向けた。その顔には焦りの表情が見える。
「お前、誰だよ!」
秋山が体を起こすと。
「お前が掴みかかった奴が言っていた悪魔だよ」
夕日を背後に、感情を読み取れない笑みを浮かべた悪魔がそこには居た。
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