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「ああ、秋山。あれがお前が言っていた悪魔か?」
首から手を離し、滝川は本殿の階段を降りた。道すがら手頃な石を掴む。
「おい、悪魔。お前がこいつをたぶらかしたのか? それでこいつがとんでもないことをしでかしたの知っているか?」
石を持った腕をぶんぶん回し、悪魔との距離を詰める。悪魔は微動だにしない。
滝川と悪魔との距離が目測一センチまでに縮まった。空気がかなり張り詰める。
「お前のせいで!!」
意を決したように、滝川が腕を振り上げる。完全に正気を失っている。秋山は咄嗟に目を瞑った。
数秒後。秋山は目を開いた。
表情を崩さずに、悪魔は滝川が振り上げていた腕を人差し指一本で支えていた。
「何だよ! 何なんだよお前ら!」
落ち葉が落ちるように、滝川はその場に座り込んだ。
悪魔は軽く鼻を鳴らし、悪魔は秋山の方に視線を移した。
「帰るぞ」
そう言い捨てると、悪魔はくるりと踵を返した。
「ねぇ、滝川はどうするの?」
秋山の問いに、悪魔はただ押し黙っている。その背中からは覇気が発せられている。
「なぁ!」
「いいから帰るぞ!!」
突然の悪魔の怒鳴り声に、今度は秋山が黙り込んだ。
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