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滝川と悪魔の一悶着から二日経った。それ以降、悪魔とはまともな話をしていない。
今夜ももカップ麺を片手に、秋山は憂鬱な気持ちで階段を昇った。
「今日もカップラーメンか」
「これしかないもん。どうせ料理出来ないデブだし」
秋山の痛恨の自虐を尻目に、悪魔はタイマーに手を伸ばした。
部屋に張り詰めた空気が立ち込める。例えるなら親に怒られた後に、一緒に食べるご飯だろうか。
しばらくして、タイマーの音が静かな部屋の空気を切り裂く。無言で悪魔はカップラーメンに手を伸ばした。
すっかり慣れた手つきで蓋を開け、割り箸を割る。
もしかしたらこいつは悪魔じゃないのかもしれない。
ただ自分の事を悪魔だと言っている不審者で、ただ家に居候したいだけなのかもしれない。
そんな考えが、秋山の中に熾火のように広がっていった。
「沼田に対する復讐。あれ、本当にマイルドモード?」
ここ二日間、ずっと疑問に思っていたことが垢を出すように口から出た。
その言葉に、悪魔は麺を啜ることをやめた。
「どういうことだ?」
「マイルドモードじゃなくて、勝手にお前が人生崩壊モードにしたんじゃないかって聞いているんだよ」
強気な秋山の発言に、悪魔は眉間にシワを寄せた。
「そんなことする訳ないだろ。もしかしてお前、俺を疑っているの?」
カップ麺から目を移し、悪魔は秋山の見つめている。悪魔とは思えない純情な瞳だ。
「そんなわじゃないよ。ちょっと疑問に思ったから、聞いただけ」
バツが悪そうに秋山は、既に三分経ったカップラーメンに手を伸ばした。
「変えたよ。マイルドコースかる崩壊コースに」
悪魔の衝撃的な言葉は、秋山の手を止めるのに十分だった。
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