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討伐者ステータス(討伐者余談込み)
「守っていたんだろうか、昔の主人の家を」
私は、今の二人以外にもう一人乗れば、定員オーバー確実な小型の船を漕ぎながら、依頼内容を思い出していた。
今回の依頼は、単身で受注した。
だが、私の装備は、禁忌兵器はおろか武器屋に売っている値の張る武器も持っていない。装備は、古い愛用の片刃の剣、通称「刀」のみ。他の持ち物は、最後の晩餐用の豪華な食材だけであった。
この、軽装備の理由は、この刀が絶大な攻撃力を誇るとか、私が実は、「天使ミカエル」の生まれ変わりだとか、街で人気の御伽話にもある「異世界」からの来訪者だとか、「私がドラゴンです」とかでは、決してない。
単純に、面倒だったからだ。
それに、とある理由から自暴自棄(ヤケ)になり、世捨て人として生きてきたので、これで死んでも構わなかった。だからこそ、こんな無謀な依頼も、二つ返事で受諾した。
どうなろうと、どうでも良かったし。
死んでも構わないが、決死の覚悟でもない。
そんな私の戦い方は、人はおろかモンスターさえも恐れた。
恐れられた分、私にいくらか運が味方し、これまで数百の依頼を、運よく生き残ってきた。
その、誇れない数々の武勲から、畏怖を込め「不死」の名を、教会の偉い人(名前忘れた)から授かった。
この「不死」という、私にとっての不名誉が、今回の依頼を招いたことになる。
誠に面倒だ。
あと、軽装備なのは、いつ死んでもいいし、自ら死にに行くかもしれない、そんな私に、教会が保有する貴重な残り一本の聖剣を託され無駄にしてしまうのが、偲びなかったというか、単に馬鹿らしかったからだ。
依頼を受けた際、他のメンバーの手配やその他の提示された好条件とともに、丁重にお断りした。
あ、お金が無かったので、食材費だけはもらった。死ぬ前に、料理を作りたかった。
余談ではあるが、この最後の晩餐用の食材は、もう残り僅かだ。
帰りの道中分は、無い。
行ったら最後と思って臨んだから、帰りの分が無いことへの後悔は無い。
しかし、今、もう少し持ってくれば良かったなぁ、という後悔はある。
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