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討伐同行者説明(その1)
唐突だが、道すがらに増えた、もう一人の同舟の仲間を紹介する。
彼女は、先ほど仲間に加わった、不思議なやつだ。
まず、今回の討伐対象であるドラゴンメイドの、「メイド」部分を表したような服装をしている。つまり、メイド服ということだ。
細かいことは知らないが、彼女曰く「ゴシックメイド」という分類らしい。「可愛らしい」と褒めたら、その時持っていた肉と同じ色の顔色で、切れのいいパンチをみぞおちに食らった。私の顔は対照的に青くなった。
そんな服装をしているから、家事全般が得意だと、「最初」は思った。
いや、最初もなにも、印象をもつことさえ、最初はできなかった。
彼女と出会ったのは、島に行く前の浜辺、最後の晩餐の仕込みの二日目だった。
仕込み中の私の前に、腹を抑えて飢餓を訴える彼女が、いつの間にか現れた。
そんな彼女は、仕込み中の食材を半分平らげ、その後の調理は一切手伝わず、出来上がった晩餐のほとんどをその腹に収め、船の私のベッドで朝まですやすやと眠った。
これを受け、そんなこと(家事が得意)は無いな、と確信した。
翌朝目覚めた彼女に、釣った魚と集めた果物の朝食をふるまったのは、つい今朝のこと。
私が給仕じゃないか、と心中でつっこみを入れたのはさっきのこと。
しかし、食われたことに、後悔は無い。
うまそうに食べ、満足そうな笑顔は、在りし日の師匠を彷彿とさせ、懐かしかったし、食べてくれる人も久しかったからうれしかった。師匠も私の料理をうまそうに食べていたな。
話は逸れるが、その師匠が亡くなったことが、私が世を捨てた理由、今ここにいる訳。
いかなモンスターでさえ、その鍛え上げた肉体と武器により、屠ってきた師匠。どんな勲章を得ても慢心することはなく、たえず研鑽を続けていた。
師匠は私の誇りであり、師匠の教えは私の「不死」の一端を担っている。
だが、終わるのは一瞬だった。
生まれたてのドラゴンに、簡単に殺された。私も同行した依頼で、偶然出くわしたそれに。
亡くしたことではなく、「努力」が「才能」にひねりつぶされたことが、異様に心にきた。どんな修練の賜物も、才能の前には無力か、となんだか力が抜けてしまった。それ以降、私は生きる気力が沸かないというか、頑張ることがむなしくなった。
師匠の刀を引き継ぎ、今の今までむなしく生きてきた。
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