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討伐同行者説明(その2)
話を少し戻す。
この話は、彼女にもした。
なお、彼女にした他の話は、基本的に興味が無いようで、「うるさい」と取り付く島もなかった。
だが、適当に話したこれには、その時丁度出来上がったステーキとともに、食いついた。
てっきり「肉がまずくなる」と言われるかと思ったので、この返しには、次のステーキをひっくり返すことを忘れるくらい、驚いた。さらにそこから、身の上話まで話し出したので、二晩煮込んだビーフシチューの鍋の底を焦がすくらい、大いにおどろいた。それも全部食われた。
昔、彼女には「家族」がいたらしい。今の私のように、身辺の支度を全てしてくれる(便利な)家族が。その家族は、彼女に「助けられたから」と言い、ご恩返しをしていたらしい。彼女も、最初は疎ましく思っていたようだが、かいがいしくも優しく世話されることが、次第に心地よくなっていったそうだ。
しかし、彼女の家族は、殺されてしまった。
100名ほどの人に囲まれ、強くないその家族は、なんの抵抗もできなかった。
彼女は、すぐに駆け付け、人を全て屠り、家族の胸に刺さった剣を投げ捨てたが、後の祭りだったそうだ。
腕の中で冷たくなる家族の名を、雷鳴の如く叫びながら、降りしきる雨よりも強く泣くだけしか、できなった、と。
その時助けられなかったことが、今でも彼女を苦しめている、ようだ。具体的には気持ちを言ってくれなかったので、私の推測となる。
だが、話す姿、眉間にしわを寄せ、肉を乱暴に噛みちぎり、傍らの銘酒を飲み干した後の「ダン」と一際強く打ち付けた姿は、私の目にとても辛そうに見えた。
…もしかしたら違うかもしれない。
その家族の服を模したものが、今の彼女の服らしい。
「喪に服している、に掛けているのか」などとは、口が裂けても言えない雰囲気だった。
何はともあれ、大食らいで、メイド姿で、家族思いの彼女と、卵と牛乳と砂糖が同乗者だ。
もっと食材を持ってくれば良かった、そうすれば彼女にもっとふるまえたのに。
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