不思議なBAR

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不思議なBAR

立花は悩んだ。この奇妙で謎めいた「占いBar MoMo」というお店に入り、自身の未来を占ってもらえば、これからの就職活動の打開策となるヒントを得ることができるのではないかという淡い期待と、信憑性が疑わしい占いなどを信じて、高額かもしれぬ料金を支払うことは愚かではないかという猜疑心が、彼女の心の内でぶつかり合っていた。そうやって店の前で悩んでいると、店の扉が開いた。中からは、金髪のリーゼントヘアーをした老婆が出てきた。 「ワタシの店に何か用かい?」 老婆はハスキーな声で、立花ユリを見つめながら、問い詰めた。 「え、あ、あの」 「ん、何だい?言いたいことがあるなら、ちゃっちゃと言いな!」老婆はなおも立花ユリを見つめている。その視線は獲物を狙うハンターのような眼だった。 「え、えーと、う、占いをしてもらいたいです」立花は老婆の雰囲気に圧倒され、しどろもどろになりながら、老婆の問いに答えた。 「ふーん。だったら、店の中に入んな。そんな所でうろちょろしてたって何も始まんないよ」 「は、はい!」 老婆はドアを開けたまま、立花が店内に入るのを待った。立花はキョロキョロと辺りを見渡し、一度深い深呼吸をしたのち、店の中へと入っていった。 店内は外観とは裏腹に、かなりシックな内装になっており、立花ユリが想像するバーのイメージをそのまま再現したような造りとなっていた。厨房側の壁には瓶に詰められた沢山のお酒が行儀良く並び、カウンター席が四席、正方形のテーブル席が二席置かれていた。また、店内の照明はランプで照らされており、明る過ぎず暗過ぎず、人の心を内省的な気持ちにさせてくれるほどの灯りの強さだった。
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