不思議なBAR

1/1
前へ
/27ページ
次へ

不思議なBAR

「なに、ぼうっと突っ立てるんだい?さっさと座りな」金髪の老婆は、厨房側に入っていくと、コップに水を注ぎ始めました。 「は、はい」立花はカウンター側の右から二番目の席に腰に荷物を置き、コートを脱ぎながら、老婆に話しかけた。 「あ、あの、実は」 「金がない、そうだろ?」 「え、何でそれを?」 「そりゃねえ、こんな仕事をしてれば、嫌でも分かるもんさ。目の前にいる奴はどんな奴かっていうことをね。まあ、お前さんの場合は他の連中よりもわかりやすい」老婆は一度言葉を切り、立花の方をチラッと見た。 「まだ新調したてのスーツとコート。薄めの化粧に、染め残しが残る黒髪。それにその不安で憂鬱そうな表情から察するに、この時期になっても、まだ就職先が決まってない就活生ってところだろ?この店が気になったのも、自分の将来がどうなるのかを案じて、占ってもらおうかと考えた…そんなとこだろ?」 金髪の老婆は立花の前にコップに注いだ水を置いた。彼女は口と眉を斜め上に釣り上げて笑っていた。その表情はまるで魔女のようだった。 「何で、そんなことまで分かるんですか?」立花は怯える目付きで老婆を見返した。 「そりゃ、ワタシは占い師だもの。まあ、詐欺師といってもいい。どっちにしろおんなじだから。とにかく、ワタシは人の人相を見て、飯を食ってる。そして、ワタシはそれを見るのが上手い。それだけさ」 老婆はまたコップに水を注いだ。そうして今度は、その水を勢いよく飲み干した。 「それで、アンタは何を占ってもらいたいんだい?」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加