不思議なBAR

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不思議なBAR

「その水晶玉に出てくる十年後のアンタに、アンタ自身の未来を聞けばいい。そう言ってるのさ」 「はあ?」 「何だい?まだ分からないのかい?」 「すみません。ちょっと頭がこんがらがっていて」 「ったく。しょうがない子だね。この水晶玉はね、魔法の水晶玉なんだよ。この水晶玉の前に立った人間の未来を教えてくれる魔法の水晶玉なのさ。でも、その未来を教えてくれるのは、アンタ自身なワケ。しかも、十年後のアンタなのさ。だから、そう遠くの未来のことは変わらないし、十年後のアンタが今のアンタに全てを教えてくれるとも限らないワケさ。まあ、それは十年後のアンタの気分次第ってところさ。さあ、もう分かっただろ?」金髪の老婆は、人から同調を求める時に外国人がよく行う、顎を突き出しながら戯けてみせるジャスチャーを行った。 「さっさとやってみな?世の中にはね、頭で理解するよりも、身体で理解した方が良い時が山ほどあるんだ。今回のこともそうさ」 立花は眉間に皺を寄せ、嫌々ながらも、老婆の指示のまま水晶玉を覗き込みました。内心ではこんなところに来てしまった自分を情けなく思い、早く家に帰りたいという気持ちでいっぱいだった。 水晶玉の中身には十年後の自分など存在せず、ただ彼女の心の有り様のように、もやがかかったように白く燻んでいました。しばらく、水晶玉の中を覗き込んでいたが、何も変化が起こらなかった。 「あの、すみません。やっぱり、十年後の私なんて出てこないです」立花は水晶玉を見つめるのをやめ、呆れた声で老婆に言った。
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