不思議なBAR

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不思議なBAR

「ん、そうかい?おかしいね、昨日までは上手く機能してたのに。ちょっとお待ち」老婆はそう言うと、水晶玉を手に持ち、さまざまな角度から眺め始めた。 「私はまた利用されるのか?」 立花ユリは心の中でそう思った。そうして、これまで言われてきた言葉たちが彼女の脳裏に蘇ってきた。 「ユリちゃんはお利口さんだね!本当にママの言うことをよく聞いてくれる。えらいね。ユリちゃんはずっとお利口さんでいてね?」 「立花さんって、真面目だよね?何か生き辛そう」 「ほら、あの子またあの先生に色目使ってるよ。ホントあざといわね。恥ずかしくないのかしら?」 「あなたって〈夢見る乙女〉って感じよね?」 「何が良いんだろうね?あの大人しくて、従順な感じがいいのかな?」 立花は奥歯を強く噛み締めた。これまでと同じように怒りを押し殺しそうとした。私は〈いい子〉でいなければいけない。怒ってはいけない。〈いい子〉でいなければ、〈いい子〉でいなければ、そうでなければ私の存在意義などない。何度も何度も自分に言い聞かせた。だが、噛み殺していたはずの怒りは口元へと向かい、閉ざされた世界から抜け出ようとしていた。頭ではダメだと分かっているものの、限界だった。 「いい加減にしてください!」突然、立花は声を荒げた。
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