車窓から

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車窓から

そうした想いがあり、立花は教員を志望していたわけだが、大学四年生の春に行われた教育実習がきっかけとなり、その道を道半ばで諦めてしまった。教育実習の際に、彼女の指導教官となっていた女教師が陰湿な女であり、一度のミスを何度も何度も繰り返し責め続ける女だったのだ。始めは、自分のためを思って、助言してくれているのだと解釈をしていたが、次第にそうではなく、ただ単純に、若いというだけでクラスの生徒たちからチヤホヤされている立花のことを僻んでいるに過ぎないということが分かった。教師という生き物の中には、その特権的な地位に居続けるが故に、屈折した人格を形成してしまう場合が多々ある。そうした教師は、生徒ばかりではなく、同じ教員たちにも悪い影響を与え、まるで寄生虫のように人の心を次第に蝕んでいく。立花の指導教官もまた、そうした寄生虫のような教師であった。立花ユリは、そうした陰湿な指導に次第に心を疲弊させ、遂には教育実習を途中で投げ出してしまうほどに病んでしまった。
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