車窓から

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車窓から

それから、三ヶ月ほど、彼女はろくに大学にもアルバイトにも行けなくなってしまった。自らの夢を途中で投げ出してしまった自責の念と社会に潜む魔物たちに対する恐怖が、彼女の虚弱な精神を支配してしまったのだ。彼女は自室に篭もりながら、ひたすら惰眠を貪った。彼女の身の内にポッカリと開いてしまった空虚さを誤魔化すために、僅かばかり時を忘れさせてくれる嗜好品に手を出すようになった。彼女は毎夜、焼酎をたらふく飲み、タバコを山のように吸った。始めは喉が焼けるほど痛みを感じたが、今はその刺激も薄れ、むしろその行為を行わなければ寝付けないほどに快楽の渦に呑まれていた。 立花ユリは自堕落になっていった。そうした自堕落な生活が彼女の精神にも大きな影響を与えていたことは言うまでもない。彼女は周囲の人間がどんどん将来の道を決めていくのを傍目にしながら、何も決断せず、無為な時間ばかりを過ごしていた。しかし、そんな生活も長くは続かなかった。彼女の自堕落さに痺れを切らした両親が、進路を早く決めるように急かし始めたのだ。教育実習での災いに始めは同情的だった両親も、今となっては、困難に立ち向かわずに逃げ出してしまった彼女の弱さを遠回しに責めるようになっていた。
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