面接

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面接

立花ユリは、今、樹脂製の黒い椅子に座っている。この部屋には無駄なものがほとんどなく、必要最低限のものしかなかった。長方形に囲われたキャスター付きのテーブルに、横に三脚、縦に二脚ずつ置かれた椅子、そして、無地の白い壁には色彩画の絵が掛けられていた。LEDの照明は妙に明るく、この部屋を万遍なく照らしていた。受付を済ませた後、可愛らしい気品のある女性が立花ユリをこの部屋に招き入れた。  彼女はその後、会社のパンフレットと温かいお茶を用意し、立花ユリのテーブルに置いた。今回立花を担当する面接官は電話対応に追われていて、少し遅れるらしい。受付の女性はそうした簡易的な説明を立花にした後、そつのない笑顔を振り撒いて、部屋から出ていった。実に洗練された動きだった。まるで巧妙にプログラムされた機械のように、無駄がなく、再現性の高い動きだった。彼女はこうした行為を何度も繰り返し行なってきたのだろう。笑顔までも完璧に一連の動作の中にプログラムされているとは恐れ入った。
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