浜辺から

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「というのがこの石の秘密なんだよ。僕があの空白の時期にふと思いついて起業した会社が、ここまで成長したのは、もしかしたらこの石の、いやアマビエのお陰かもしれないと思っているんだ」  社長の隣に座っている専務は「また始まった」という顔を隠しもしていなかった。その緑色の石は座布団をあてがわれ、社長室の一番奥に鎮座している。社長の話は毎回違うから、どれが本当のことだか分かりはしない。にしても今回は空想上の動物まで登場したのだから、更に酷い。その石をあげた恋人は突然街でスカウトされ、パリコレのファッションモデルを務めたと言っていたが、それも大ボラなのだろう。  でもこの社長、言いようもない魅力があって、その大ボラもなんだか本当のことのような気がしてしまう。これが創業者のカリスマ性という奴なんだろうか。それとも、この石にまつわる話は全部本当なのだろうか。 「まさかね」  僕はインタビュー記事をどう纏めたものかと考えていた。
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