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さて、スッキリしたし……そろそろ、寝室に入ってゆっくりしようって事になり、ベッドに横たわる
『 綺麗になったパンダくん~スキスキ~ 』
フカフカで、柔軟剤の匂いがするパンダくんを抱き締めては頭にスリスリしていれば
医学書片手に、本を読んでた白は頭に触れてきた
『 んー? 』
「 可愛いな、と…… 」
『 そりゃ年下だからな、そう思うだろう 』
「 ちょっと違う。確かに年下だからと言うのも有るかも知れないが……。どちらかと言えば愛玩動物だな 」
『 愛玩動物…… 』
えっ、俺……人間止めちゃった系なのか
あれ?なんか、どんどん格下になってるような気がするんだが……
恋愛どうのこうの言ってた時と比べると、子供っぽいと言われて、しまいには愛玩動物?
ヤバい、俺の立場が危うい
「 子犬みたいだ。クンクン鳴いてるような 」
『 子犬…… 』
俺は子犬なのか……まぁ、泣いてるもんな……
困らせてるし?自立出来てないし、強ち間違ってはないから言葉に詰まる
「 だから可愛いと思う 」
『 嫌じゃないのか、鬱陶しいとか 』
「 別に、御前が寂しがり屋なのも泣き虫なのも今に始まってない。俺からすればトレーひっくり返したり、点滴抜いては走り回ってた時の方が大変だった 」
『 ぅ…… 』
そりゃ最初は、真面目に悲惨だったと思うぐらい荒れてたからな……
そこと比べられると、今は滅茶苦茶大人しいと思う
まるで犬の頭を撫でるように、くしゃくしゃと撫で回す白を見上げる
「 だから、可愛いと思う。よく、懐ついてくれただろう。愛おしいよ 」
『 っ…… 』
嗚呼、よくそんな事をサラッと言えるようになりましたよな……
恥ずかしくて頭から煙が出ると思った
パンダくんの頭に顔を埋めて、すり寄れば白は優しく笑っては本を横へと置く
「 おいで、黒 」
『 既に横にいるし 』
「 こっちに 」
『 うー…… 』
嫌そうに唸るも、否定しても無言の訴えがある雰囲気に負けては、パンダくんを持ったまま彼が座ってる上へと行き、太股に腰下ろせば
すっと、パンダくんは抜き取られ横へと置かれる
「 いい子、いい子してやろう 」
『 なんだよそれ……。んっ…… 』
こんな甘ったるい雰囲気、苦手だ
行為でもヤりそうな雰囲気じゃなくて、只甘やかしたいような白に、どう反応していいか分からなくなる
ひたすら頭に触れて撫でてきて、笑みを浮かべてるような彼に、すげー居心地悪い
恥ずかしくて、顔が熱くなるのを感じれば隠すように肩へと顔を寄せる
「 ふっ、御前はとてもいい子だ。今日は沢山、患者さんに話し掛けてくれてありがとうな。看護師さん達が安心して任せれると言ってた 」
髪に触れる手付きに、恥ずかしいけど眠気も誘われる
心地のいい声の音量とトーンに、すり寄ったまま瞼が重くなりながら返事を返す
『 んん……俺には、それしか出来ねぇから…… 』
「 いや、十分だ。今田さんがあんなに喋って、名前まで覚えていたのは驚いたからな。認知症は、ちゃんと向き合えば人によって改善される事が分かる 」
『 そりゃな…… 』
忘れていっても、ふっとした時に強い思い出は思い出すものだ
それは逆に、嫌な記憶も過る時もある
人間は幸せな記憶は忘れることは多いが、嫌な記憶はずっとトラウマとして残り続けるからな
「 黒、御前の過去は知らないし下手に詮索はしないが……。良いときはいつでも言え。聞くとは出来る 」
『 嗚呼……なら一つ…… 』
「 なんだ? 」
『 チンコと口内のピアスは、買われた時に……その相手から付けられたものだ……。麻酔もなしに……気絶を繰り返して三時間かけて嵌められた……。だから、穴を塞ぐのが嫌なんだ……勿体無いから…… 』
急に一気に喋った俺に、撫でていた白の手は止まった
「 悪い、黙って聞いているつもりだが……順を追って説明してくれないか。幾つか気になる点が…… 」
『 ふっ、内緒。またいつか話す 』
軽く笑って頬へと口付けを落としてから、横へと移動しパンダくんを抱けば、白は困ったように笑ってから頭に触れた
「 なら、また……ゆっくりと聞くさ 」
『 嗚呼……そうしてな 」
この時はまだ、言うほどの勇気は無かった
今の現状でいっぱいっぱいだった為に、過去を掘り出してまで、話す気にはなれなかったけど
彼は無理に聞き出すことなく、何度か頭を撫でては、布団へと潜り仰向けになったまま目を閉じた
「 ライト消してくれ 」
『 はいよ、おやすみ 』
「 ん、おやすみ 」
二十二時頃、いつものように就寝の時間が訪れる
規則正しい生活をしてる白には、これ以上起きているのは嫌らしく、さっさと寝る
因みに、寝付きは滅茶苦茶いいし早い
「 スゥー…… 」
『( 目を閉じて一分以内に寝起き、流石だぜ……先生 )』
そして俺は、内緒でゲームをこそこそやってから0時頃に寝るのさ!
うん、寝れなかったわ……昼間ぐっすりと寝て、
全く眠れなかったから、深夜四時ぐらいからキッチンに行って冷蔵庫を開けて、弁当を作り始めた
今日の朝御飯は任せろ~って思いながら、キャラ弁当を作成する
白はキャラなんて知らなさそうだから、彼が知ってるだろうキャラを海苔で描く!!
キャラ弁当用に買った、デザインナイフ又はアートナイフってやつを使って海苔を切り絵のように切る
『 ヤバいぞ、黒ジャックってどんな顔だっけ…… 』
俺が知ってるのは新しくなったバージョンの顔だけだ、それを記憶だけで切り絵にするって言う難易度高めの事に気付き
ナイフを当てていた海苔を見てから、諦めたよな
うん、諦めて今日は可愛い可愛いペンギンの真ん丸のおにぎりを作ることにした
それが出来上がれば、牛肉と玉ねぎの甘辛炒め、カニ&タコさんウィンナー、ちくわに塩をつけたキュウリを挟み切ったやつ、ミニトマト、マカロニサラダを入れる
福神漬けもちゃっかり添えてな
其々、こんぶ、焼き明太子、ツナマヨの入った
ペンギンおにぎりを三つ作って、レタス、ブロッコリー、カリフラワー、浅漬けをした大根を薄くスライスして薔薇を作ったのを挟み入れる
『 よし、出来た 』
※イメージイラスト
なんかぱっと見た目、男の弁当なのにご飯の量が少ない気もするが……
まぁ、他のおやつやら食うと思うからいいか
それに、牛肉の甘辛炒めは詰めるだけ詰めてるから、こっちにお腹いっぱいになるかもしれない
俺なら茶碗ぐらいのご飯は欲しくなる量はある
まぁいいか、牛肉の甘辛炒めの方は茶色っぽいけど、インゲン豆、ミニトマト、キュウリ、マカロニサラダが明るさをなんとか保ってくれていた
その後に流行る“ インスタ映え “は狙えないとしても、三十八歳の男が食う弁当にしては可愛いんじゃないか
ついでに、チーズを牛肉の甘辛炒めの乗せて海苔で文字を書く“ お疲れ様です “の文字を入れたら完成
サランラップを被せて、その上から蓋をしてしっかり閉じて箸とフォークを置き風呂敷に包み、冷蔵庫に入れる
朝御飯は、余りだ
『 色々余ったから~、それ使おう 』
お弁当に使って余った、焼き明太子でクリームパスタを作り、マカロニサラダ、ちくわとほうれん草のマヨネーズ和え
『( やばい……結構……白いぞ…… )』
まぁいいか、ツナマヨとコーンを使った米粉のピザパンの準備をして、焼くことなく
具材を乗せたままサランラップに包み冷蔵庫に入れておく
完璧!だと思って、使ったものを片付けていれば白は起きてきた
「 いい匂いがする……。ん、なんだ……作ったのか? 」
『 嗚呼、おはよう。そう、朝御飯は作ったから後で食おうな 』
「 ん…… 」
六時丁度に起きた、少し眠そうな白は軽く頷いて俺を見てから洗面室に向かった
横にいないから探したんだろうな……彼らしい
そして、俺は時間が空いたので、コンソメを入れた、玉ねぎ、人参、ジャガイモ、コーン、ブロッコリー等が入った、野菜スープを作り置く
後はゲームをして時間を潰した
「 おはよう、黒。朝御飯、ありがとうな 」
『 ん、おはよう。いいって……食うか? 』
「 そうだな 」
七時頃、支度を終えてゆっくりしてから、リビングに来た彼に合わせて、野菜スープを温め直し
冷蔵庫から取り出したピザパンをトーストして、クリームパスタは軽くレンジで温めてはテーブルに乗せていく
「 美味そうだな……。そう言えば、御前の手料理は初めてな気がする 」
『 初めてだろうな。口に合えばいいけど 』
「 楽しみだ 」
何気無く小皿やら、飲み物を準備してくれる白に有り難いと思い
皿に焼けたピザパンを其々二枚乗せ、最後にテーブルに置く
『 ほらほら~合掌!いただきます 』
「 嗚呼、いただきます 」
『 どうぞ~ 』
料理が美味い人に手料理食わせるのに勇気いるな……
明太子のクリームパスタに、余った海苔を料理用ハサミで細かく切って乗せて、小皿に取り分けて手元に置けば、彼はトーストを齧る
「 んー、うん……美味い 」
『 ふはっ、そりゃ良かった 』
俺のは米粉パン~って思いつつ、安定の野菜スープを飲んだ後にピザパンを食う
『 あ、美味い。チーズもだが……ツナマヨうまっ 』
子供が大好きな味だろうなって思いながら、食っていく
「 スープおかわりしてもいいか? 」
『 いいよ、全部。夜までは回さないから 』
スープを取りに行った白は、他にも余ってる物を皿に乗せて持ってくる
「 どれも、美味くてな……クリームパスタは市販のじゃないだろ? 」
『 米粉パスタ以外は手作りですー。俺的に、クリームにちょっと醤油加えてるんだよ 』
「 嗚呼、なるほどな……これは続けて食いたい 」
『 そかそか、ならまた作るさ 』
楽しみにしてると頷いた彼は、朝御飯だと言うのにガツガツ食ってるから、結構食べるなって思う
そう言えば夜のファミレスも、定食頼んでたのに単品でハンバーグをもう一皿食ってたぐらいには
白は結構、食べる人だ
小食の俺が、黙々と食べてる間に彼は小皿を止めて、パスタを直接皿を寄せて食ってるし
結構な具沢山のスープも空だと思う
これでパン二枚食ってんだぜ……すげぇ……
俺が食べ終わると同じタイミングで、白も全ての物を食い終えてくれれば両手を合わせる
「『 ご馳走さまでした 』」
「 お腹いっぱいになった。今日は頑張れそうだ 」
『 金曜日だし、手術多いもんな 』
「 嗚呼、そうだな 」
日曜日に此処に来て、もう金曜日か……
早いなって思う
皿の片付けをしてくれる白を見た後に、冷蔵庫を開ける
『 はい、お弁当箱どうぞ 』
「 弁当もあるのか?そうか、ありがとうな 」
『 開けてお楽しみなっ 』
ニコッと笑えば、白は嬉しそうに微笑んで鞄の中へと入れた
さて、色々終えて……あっという間に朝の時間は終わる
今日もまた、玄関までは行く
『 行ってらっしゃい!今日は、大丈夫だ! 』
「 そうか、行ってくる 」
日曜日だし、丸一日手術を行う日に遊びにはいけれない
残業だってするかもしれない……
だから、頑張って手を振れば、白は軽く笑って頬に触れ額へと口付けを落とした
「 ちゃんとご飯食べて、待っててな 」
『 ん、分かった 』
ゆっくりと離れた白を見てから、彼が何気無く横を向いて待ってる様子に気付き
肩に触れ頬へと口付けを落とせば、満足気に鞄を持ち玄関を出ていった
行ってくる、そう小さく呟いたその背中に手を振れば、今日はなんだか大丈夫だった
『 弁当が一つしかないと諦めつくな。ん?弁当が一つ……で、白……全部食ったよな?……俺の昼飯!!あ!ピザパン作れる材料あるからそれにしよー 』
大丈夫!全然、昼飯ある!と喜んで部屋にリビングの方へと戻り、部屋を見渡した後に即寝室に入った
『 うぅ……寂しくないし…… 』
俺の、お利口さんで待つのはもう少しあとかもしれない
パンダくんを抱き締めて、涙はうっすらと出たけど
ゲームを始めたら平気だった
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