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「でもね、好きだから一緒にいたいってこと、わかってよ」
すいっとブランコごと私に近づいてきて。
唇を何かが掠めた一瞬後で、至近距離でキレイな顔した麻生くんが男の子の顔して笑ってる。
待って、今のって、今のって?!
驚いて唇を覆う私に。
「良かった~!芽衣ちゃんから幼馴染止めたいって言ってくれて。だったらいっそもう恋人になれるチャンスじゃん、ね」
そう言って微笑んで、アッと麻生くんは地面から何かを拾い上げて私の手にそれを載せる。
「小さい頃さ、芽衣ちゃんと一緒にシロツメクサで冠作ったでしょ、あの時の芽衣ちゃんの可愛さったらもう!!オレのこと女の子だと思ってたみたいだけどあの時オレね冠被りながら一端の王子様気分だったよ、芽衣ちゃんの」
知らなかったでしょ、と笑う麻生くんに混乱してる。
掌に載せられたのは四葉のクローバー。
「あの冠にもね、四葉のクローバー入れたんだよ、願いが叶うっていうから。いつか芽衣ちゃんと結婚できますように、って」
無邪気に微笑む麻生くんに、私は頭がクラクラしている、ああ、これは多分熱が出る前兆だ。
「恋人って意味わかってる?麻生くん」
「そりゃわかってるさ、芽衣ちゃんに触れたりキスしたりできる特権がある人のこと」
う、うわああああ、それ以上言うな!と麻生くんの口を塞ごうとして伸ばした手はいとも容易く捕まえられて引き寄せられる。
「芽衣ちゃんはオレが誰か他の女の子に触れたりキスしたらどう思う?」
どうって…、そりゃ、ね。
「…嫌に決まってる」
「オレも嫌、オレ以外の誰かが芽衣ちゃんに触れるなんて絶対嫌」
急にモテ始めて皆から麻生くん麻生くん呼ばれて、どんどん離れて行っちゃう気がして。
幼馴染だから近くに居れたのに。
ずっとずっと一緒で、毎日芽衣ちゃんって、ずっと優しくて。
なのに麻生くんともういられなくなっちゃう。
自分で告げたことなのにそれがとても苦しくて。
夕べ私は何度も泣いて泣いて泣いて。
朝になって気づいたのは麻生くんが好きだということ。
好きだけど、好きだから、近くにはいられないこと。
「芽衣ちゃんのことが好き、ずっと好きだよ」
麻生くんの心臓が私の心臓と同じくらい早鳴っているのが聞こえる。
いつの間にか逞しくなってる麻生くんに抱き寄せられるのはめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
落としてしまわないように掌に軽く握りしめた四葉のクローバーを想いながら呟いた。
「知ってる?麻生くん」
「ん?」
「シロツメクサは私を想って、四葉のクローバーは私のものになってって花言葉」
「…芽衣ちゃんの答えは?」
「今度は私も四葉のクローバー入れて花冠作るね」
微笑み合ってもう一度小さなキスをした後で。
本格的に熱を出した私を家まで送ってくれる優しい王子様が。
その夜、四葉のクローバーが入った花冠を私に被せてくれる夢を見た。
【完】
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