flower crown

　昨日、三年生のお姉さま方に呼び出しをくらいました。
　理由は
　「麻生くんの幼馴染だか何だか知らないけど一緒に登校とか止めてくんない？」
　とのこと。
　でも毎朝迎えに来るのは麻生くんだし、と喉元まで出掛かって飲み込んだ。
　出来る限りそうします、失礼します、と懇切丁寧にお話して去ろうとした瞬間に。
　グイッと引っ張られたポニーテール。
　「っ、痛っ、離してください！！止めて、痛いっ」
　剥げそう、剥げちゃう、と必死に抗った私は急に解放された、頭の後ろでザクだかジャキだか聞いたことないような音を立てて。
　急激な勢いに思わずつんのめって地べたに転んだ。
　そんな私の目の前にファサファサと何かが降ってくる。
　、髪の毛…？
　ハッとして自分のポニーテールに手をやると、結んでも肩下まであった長いそれは首までの長さになっていて、毛先がまばらだ。
　これは、この髪の毛は自分のだ、とすぐに理解した。

　「たかだか幼馴染だからって二度と麻生くんの周りウロつかないでよね！」

　捨て台詞を吐いて去っていくお姉さま方の後ろ姿を見送ってから自分の髪の毛を集めてみた。
　あああ、何でこんなことになるんだろう。

　思えば高校生になってショパン国際ピアノコンクールin ASIAなるもので麻生くんが入賞してから周りは随分と騒がしくなった。
　元々顔も性格も良いと言われてたけど、男らしさには少し欠けていた麻生くん。
　が、ピアノを弾いているときの表情や仕草が色っぽいと評判になってからの麻生くん人気は鰻上り！
　近所のオバチャンたちすら麻生くんを見ると目がハートになってるから危険だ。
　当の本人は何ら変わりなくて、モテてるって自覚もないのか。
　小さい頃から変りもない、何かというと「芽衣ちゃん、芽衣ちゃん」
　私の跡をついてくるのだ。