トラウマ

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トラウマ

自分は、トラウマがある。そう認識したのは最近の事だ。それまであの言葉は、自分を構成する一つの要素としか思っていなかった。とても大部分を占める、一つの要素としか。 「愚か者のお前は悪魔に喰われて死ぬ」 そう言われたのは、10歳の時。持病が進行し、立ち歩くことすらままならない祖母に言われた。そして祖母は同時に認知症も発症していた。面倒に感じた家族は祖母を離れに隔離していたから、祖母と交わした言葉はそれだけ。何の事か聞き返そうとしたが、すぐに親が来て連れてかれた。その数日後に祖母は逝き、その意味は未だに聞けずじまいだ。自分には、祖母の一言と悪魔への恐怖がこびり付ているだけ。
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