お知らせ

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お知らせ

お隣の桜井さんが死んだと報らされたのは8月の事だった。報せてくれたのはマンションの管理人さん。まるで皆、知っているかのような言いぶりだった。「あ、そうか。桜井さん死んでからもう1ヶ月かぁ」ホウキをサッサカしながらの呟き。もう少しちゃんと知りたかった。知らない事を告げると謝ってくれたのだから、悪意は無かったのだろう。話を聞くと、僕が所用で出掛けていた一週間の間にお隣に住む桜井さんは殺されたそうだ。殺したのは今話題の連続殺人鬼 デーモン。被害者を滅多刺しにして、その血で回りに魔方陣を書くからそう呼ばれている。僕がこのマンションに帰ってきた時には、桜井さんが死んだのは既にマンションの日常になっていて、しかも親しい隣人など居ないから知るのが遅れた。桜井さん、最近見ないなあ位に思っていた分ショックは大きかった。桜井さんはいつも会うと挨拶してくれて、僕と違い明るくて、好きな仕事を全力で頑張ってるらしくて、つまり僕とは真逆の人間だった。恋ではないが、憧れのような物は抱いていた。彼女と最後に会った日、僕は飲みに誘われた。いつもはマンションでしか会わないのにその日は駅で遭遇した。いつもより影を感じる桜井さんは「おお、道葉くん!……そうだ!飲みいかない?」いつも通り明るかった。だが、飲むに連れて桜井さんは暗くなっていった。
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