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「それじゃあ……これが雇用条件ね」
そう言って、佐久間は妻から預かった用紙を、二人の間にあるローテーブルの上に置いた。
栞が手に取って内容を検める。
「妻が世間一般的な給与と待遇にした、って言ってたけれど、もしどこかに不満があれば遠慮なく言ってくれよ」
佐久間はそう言ったが、提示された給与額は悪くなかった。なんと、寸志程度ではあるが、年二回の賞与まであった。それに住み込みだから、ここから家賃分を賄う必要もない。
待遇の面はちゃんと働いたことがないので、正直よくわからない。
ただ、自由業の作家とはいえ、税金対策で会社組織にしているのであろうか。協会けんぽの健康保険や厚生年金などの社会保険が付随されているのはうれしい。
「佐久間先生、待遇面ではこれからなにかお願いすることがあるかもしれませんが、お給料に関しては問題ありません」
しかし、まだ肝心なことを聞かされてなかった。
「それで……その……お世話をさせていただく作家の先生なんですけれど……お名前は……?」
すると、佐久間はとたんに表情を曇らせた。
「……それなんだけどね」
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