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話を聞きながら、俺は思わず猫が手を伸ばす先に目をやる。
「『ポピー』お好きなんですか?」
俺の視線が動いたことに気づいたのか、彼女は話の内容を切り替えた。
「ああ、はい。」
突然の質問に俺は咄嗟に答える。ポピーは猫が初めて俺の所に持ってきた花だ。花屋に飾られるポピーの花は俺が初めて家に飾ったポピーの花とよく似ていた。
(なるほど、ここが供給源だったわけだ。)
俺は納得と同時にそれが売り物ではなかったことに安堵を感じていた。
「そうなんですね。そうだ、ポピーの花言葉って知ってます?私、そういうの好きで調べちゃうんです。」
そんな俺の内情を知らない彼女はポピー好きだと分かった俺に尋ねる。
「えっと、確か「感謝」ですよね?」
俺は過去の記憶を辿って当たり障りなく答えた。
「はい、赤色のポピーの花言葉は「感謝」です。でも、白いポピーには「眠り」や「忘却」なんて花言葉もあるんです。ポピー全体ではまた別の花言葉を持ってて。こういう色によって花言葉が違うってよくあるんです。」
彼女は笑って教えてくれた。
「へえ、そうなんだ。知らなかった。」
猫からもらった花の花言葉だけを調べていた俺には知る由もなかった。
「じゃあ、ポピー全体での花言葉って何なんですか?」
俺は疑問に思って彼女に尋ねた。彼女は人差し指を立てて揺らしながら、思い出すようにゆっくり一つずつ言う。
「「いたわり」、「思いやり」…」
ピタッと動かしていた指を止める。
「それに「恋の予感」なんてのも。」
俺はその時、俺の方に向けられた彼女の笑顔に少しドキッと胸がときめいた。
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