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目覚めなさい。
「…うーん」
目覚めなさい、優斗。
「おあ?」
目覚めなさ――い!!
その瞬間、俺はベッドからがばっと起き上がった。
なにやら脳内で大声が響き渡った気がしたのだ。
窓からは一日の始まりを告げる朝日が燦燦と差し込んでいる。
俺は頭をポリポリと掻きながら、寝ぼけ眼を正面に向ける。
「…夢か」
あくびをしながら、体を倒そうとすると
『目覚めろって言ってるでしょーが!!』
やはりさっきの声が脳内に響き渡る。
「誰だよ、こんな朝早くによ」
俺はごしごしと目をこすりながら、自分の部屋の周囲を見渡す。
しかし、誰も人はいない。
俺は不思議に思い、首を傾げていると、
『こっち、こっち!』
再び先ほどの声が脳内に聞こえた。
俺は声の方に目を向ける。学習机の上に飾ってあった一輪の青いアスターが目に入った。
「えっ?」
俺は驚きながらそろそろとアスターに近づく。
そして枯れ始めているそのアスターに恐る恐る指を近づけた。
『やめ、やめなさい。くすぐったいでしょ。その指をどけなさい』
俺はその声を聴いた瞬間、口角が自然に吊り上がるのを感じた。
そしてつんつんとそのアスターをつっつく。
『やめ、やめなさーーい!』
俺はげらげらと笑いながら、やっとこさ指を離した。
笑いすぎたからか、目の横には涙が浮かんでいる。
「はは、どうなってんだよ」
俺はまだ夢でも見ているのだろうか。
その声の主は、先月亡くなった母だった。
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