Aster-Answer

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―― 「父さん!ご飯できてるよ」 「ああ、ありがとう」 「早くしないと!遅刻しちゃうよ」 「やれやれ、まるでお母さんみたいだな」 あの奇妙な日から2週間ほど経った。 俺はというと学校にも復帰し、父と分担して家事もこなすようになった。 母が当たり前にやっていたことも、いざ自分でしてみると中々上手くいかず、感慨深い。 とはいえ、少しずつそんな生活にも慣れ始めていたのだった。 その時、腕時計を見た父が慌てて立ち上がった。 「まずい、こんな時間だ。急がないと遅れてしまう」 父は大急ぎで背広を羽織ると、カバンを持ち上げた。 「じゃあ、俺は行くぞ!戸締りは頼んだ!」 俺はやれやれと呆れながら首を振る。 「父さん待って!忘れ物!」 俺は走り出そうとする父に風呂敷を差し出す。 もちろん中身は俺が真心こめて作った弁当だ。 「ああ、悪い。助かった!じゃあ本当に行くからな」 俺が頷くと、父は廊下に続くドアに向かった。 しかし、扉を開けようとした父は思い返したようにこちらを向いた。 「そういえば、言い忘れたことがあった。」 「どうした?」 「それ、いいな」 父が首をくいくいと上げてテーブルの方を指し示す。 俺はそこにあるものを見つめた。 そこには…一輪の白い(・・)アスターが生けられていた。 「いいだろ?」 「ああ、ばっちぐぅだ。じゃな!」 「古い…」というツッコミを寸でのところで押さえ、手を振った。 俺は白いアスターを軽く触った。柔らかい感触が少しだけこそばゆい。 「花言葉、か」 その時俺は母の言葉を思い出していた。 『アスターにはね、色ごとに花言葉があるの』 母と別れたあの日、家に帰った俺はアスターの花言葉を調べた。 赤は『変化』 ピンクは『甘い夢』 紫は『恋の勝利』 そして青は…『あなたを信じているけど心配』 「最後の最後まで、人のことばっか心配しやがってよ」 俺は小さく笑った。 涼しげな白いアスターもまた微笑むかのように小さく揺れた。 「だからこれが…俺の答えだよ」 俺は片付けを終え、リュックを背負うと玄関に向かって歩き出す。 花言葉に込めた俺の思いが天国の母に届くことを祈りながら。 白いアスター。 その花言葉は…『私を信じてください』 fin.
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