デイドリーム・ビリーバー

でも、やっぱり。
しっくりこない。
犯人は凛々花じゃない。
いくらなんでも一晩放置はやり過ぎだ。

ぶっちゃけると、私は華が犯人だと思ってる。
自作自演の狂言なんじゃないかと……

あの手紙からして違和感だらけなんだ。
ショックを受けて喋れないような子が、あんなきちんとした文章を書ける訳がない。

だから。
なんか違うんだよ。
この『世界』
私は何かを見落としている？

あぁ、まただ。
デイドリーム・ビリーバーの軽快なメロディ。
ティントティント、ティントティント……
始まった。

「あ。姉ちゃん！いたーー。なにやってんの！」

ちょうど頭の上から声がする。
見上げると、野球帽かぶって少年野球のユニフォーム着てる努が頭から落ちてくる。
あっ。努！
おお我が弟よ。無事であったか！

「まだ寝間着でーー。俺ももう行くからね――」

「えーー？行くって……何処に？」

「練習に決まってんじゃん」
そう言いながら下へ下へと落ちていく。

「そ。……そうっすか……」

よくこんな状況で野球できるな。

「姉ちゃんもさーー。土曜日だからってグダグダしてないで起きれば？いつまで逆さまでいんのよ」

え？……逆さま？

じゃあねーーって言って努は、頭を下に向けたまますぅっと落ちていく。
私は首をかしげ考える。
上を見上げる。
努は上から下へ出かけて行った。
落ちる方へ。

あ！そうか。

そうだよ。逆だ！

逆転してるんだって！

私達はいつも自分が中心で物事考えてる。
そう考えさせられてしまうみたい。

私の住んでる日本は世界地図の真ん中にあって、地動説はなかなか受け入れてもらえなくって。
他者の定義が、自分とは異なるとなかなか理解できないことがある。

地球はいつも足の下。
いろんなものを地球は中心へ引き寄せてると思っちゃう。
でもホントは月にも引力があって、海水を取り合っていたりする。

今の状況ってもしかしたら、地球や月より大きな引力が私達を引き込もうとしてるんじゃない？
やべぇ引力で。

空間ごと吸い上げられてるんだ！

地球の引力に開放されて、上昇され続けてるとは考えられない？
地球が引っ張っるのもうやーめたって言ってて、私達はどんどん凄い勢いで地球から離れて行ってるんでない？
おお！
すげぇ……
なんかちょっとドキドキしてきた！