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ハルノ花2
穏やかな春の日差しに心も暖かくなる。
プレゼントとして選んだ花を喜んでくれるといいなと、瞼の裏に〝彼女〟の笑顔を思い描くと、自然と口元が緩みそうになる。
けれど、だらしない顔は見せられないと慌てて気を引き締めるとボクはいつもの場所へと足を踏み入れた。
『良かった。今日も、いてくれた……』
「…………」
庭先には、一人の女性が佇んでいた。
肌は白く透き通ってはいるが、どこか人形を思わせるほど痩せ細ってしまっている。
そしてその表情は、今日の陽気には似つかわしくない哀しげなものだ。
儚く脆い――今にも春風に吹かれて消えてしまいそうな手折れた花のように、その姿は弱々しかった。
(仕方のない、ことかも知れないけど……)
今の彼女に、かつてのような元気はない。
すっかり荒れ果ててしまったこの庭のように、彼女の心は色を失っている。
だから――、
『今日も、会いに来たよ』
ボクは勇気を振り絞って、今日も声を掛けた。孤独な彼女に。
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