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ハルノ花
『今日は、どうしようか……。笑顔に、なってくれるといいな』
そんなことを想いながらプレゼントを選んでいると、
『よう、今日も悩んでるのかい』
『うん?』
不意に声を掛けられ、後ろを振り返るとそこには見知った友人が立っていた。
『おはよう。そっちは、散歩?』
『おう、ついフラフラっと出てきちまったよ』
『ああ、また……。怒られてしまうよ?』
『ふんっ、構うもんか。こんないい天気なのにずっと家の中にいたら腐っちまうよ。――それより、今日もあそこに通うのかい』
『うん。今日はどうしようか悩んでたんだ』
向き直り、視界に広がる色とりどりの花を見上げては、ボクはウンウンと唸ってしまう。
そんな様子が可笑しかったのか、カカッと笑いながら友人が隣りへとやって来た。
『マメだな。こんなの、どれもそう変わらないと思うけどな』
『そうでもないよ。意外と色んな意味があるんだよ……花ってさ』
『へえ、そうかい』
左程興味もないからか、友人は軽い口調で応えた。
『にしても、通うようになってどれくらい経った? なんでまたそんなことを始めたんだよ』
『それは……』
友人の何気ない問いに応えようとして、言葉に詰まった。
ボクが〝そこ〟へ通う理由――その明確な答えが、自分自身でも分からなかったから。
それでも、言えること。その言葉の断片を掻き集めるよう瞳を伏せる。
義務的なものではない。
見返り欲しさではない。
どんな言葉が似合うのか。
どんな意味があるのか。
それを深く考えようとすると、ツキンと胸が寂しく痛む。
どれも当てはまりそうで当てはまらない。
けれど、自分の今の気持ちを代弁させるように、ボクはその花を選び取った。
『多分、ガーベラなんじゃないかな』
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