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プロローグ
これは相当に無茶な賭けだろう。数々の奇跡と偶然の先でさえ、私が望む結末にたどり着くのかもわからない。
しかしあの少年なら……。
そう思わせてくれる彼の顔が思い出される。彼と過ごした日は決して多くはない。むしろ少ない方だが、彼には何かを感じた。今はただ、自分の勘を信じるしかない。
「勝手に期待しておいてなんだが……裏切ってくれるなよ……」
右手に掴んでいた"蠢く塊"を掘った穴に押し込んだ。顔を上げれば、そこには古びた石碑が鎮座している。いつだったか、彼と来た場所だ。その時のことを思い出しながら、ポケットからお守りを取り出した。この先、様々なことが起きるであろう少年の運命を祈りながら、お守りを穴に落とした。
もし彼がまたこの場所に訪れ、この地に触れさえすれば、私が望む物語を歩み出してくれるだろう。いつの日か、私が知ったこの世界の真理を君も知るときがくるだろう。
そのとき君は、どんな答えを出してくれるのだろうか。きっと私はその答えを聞くことはできないだろうな……。
「さてと……じゃあ、任せたぜ」
アレを埋めた。魔法陣も書いた。後はなるべく遠くへ逃げるだけ。ボロボロの身体を奮い立たせ、この場所から離れるために走った。どこまで行けるかわからないが、後はただ、彼の幸運を願うばかりだった。
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