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私のおしり見てるでしょ
お嬢様はローズ・ヒップティー公爵令嬢。
俺とローズお嬢様はお買い物中だ。馬車から降りて、商店街をローズお嬢様の一歩後ろを歩いている。
ひらひらした赤いドレスの上からでも分かる、プリプリしたデカいケツをチラ見しながら歩いてることは、すれ違う通行人には気付かれてるかもしれない。
「ねえ、セージ」
「なんでございましょう、ローズお嬢様」
ローズお嬢様は、赤くてストレートの髪をなびかせて歩く。
「今朝の紅茶すっぱかったんだけど」
ローズお嬢様は自分と同じ名前のローズヒップティーを一口だけ飲んで、あとは残していた。
「蜂蜜を入れるのを忘れてました」
「もう、セージったらしっかりしてよね。ほんと役立たずなんだから」
わざとに決まってるだろ。蜂蜜くらい自分で入れろ。ったく、毎日毎日こき使いやがって。
ローズお嬢様の性格はすっぱい。ローズヒップティーみたいにすっぱい。
セージと呼ばれた俺はローズお嬢様の執事。ほぼ一日中、ローズお嬢様にくっついて勤務している。
「セージ。あとで数学のレポートやっといて」
「かしこまりました、ローズお嬢様」
ローズお嬢様の宿題は俺が全部やっている。小学生の頃からずっと。担任は俺がローズお嬢様の宿題を代わりにやってることに気付いていたようで「宿題は本人がやらないと将来の為にならない」と言っていた。それを聞いて俺は「もっとバカになれ、もっとバカになれ」と喜んで宿題を引き受けた。
俺とローズお嬢様は同い年だ。俺は生まれてすぐに捨てられた。ヒップティー公爵家の門の前に置かれていたらしい。俺は拾って育ててもらった恩がある。
中学校卒業後はローズお嬢様付きの執事にしてもらったから仕事もある。
執事になったのは、ローズお嬢様の兄上・アッサム様が、俺がヒップティー家を継ごうと思っていると勘違いしていたので、そんなつもりはないんですよーと証明する為だ。
ローズお嬢様は高校生。通信制のジャワ学園に在籍している。
ローズお嬢様とそのご家族の、ヒップティー公爵家のお屋敷はド田舎にある。小中学校は通える所にあったが、全日制の高校は馬車で何日もかかるので通えない。
全寮制の高校に入ることも検討したが、ローズお嬢様の自分勝手な性格では心配だ。嫌われてしまうだろう。
最初はいじめる方で、仕返しにいじめられるかもしれない。一緒に付いていくメイドもいない。女子寮には女性の召使いしか入れない。先週入ったメイドはローズお嬢様がいびりまくって辞めてしまった。
一人で寮生活して人間的に成長してほしいところだが、このお嬢様は平気で退学するだろう。ジャワ学園のレポート、早く終わらせなきゃな。
「セージ」
「なんでございましょう、ローズお嬢様」
「私のこと好きでしょ」
「はあ?」しまった。素が出てしまった。
「なによ、その態度。私知ってんのよ。いつも私のお尻見てるでしょ」
「見てません」まさかローズお嬢様本人に気付かれてたとは。
「うそよ。見てるわ」
「見てませんって」バレていたのか。いつも見ている。
「私のこと好きなんでしょ」
「そんなことありません」ケツ見てるだけで、あんたのことは嫌いなんだよ。
「いいのよ。触っても」
「えっ……」いいんすか。
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