兄弟喧嘩

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むかしむかし、あるところに2人の兄弟が喧嘩をしていました。 彼らはいつもいつも喧嘩をしてお母さんを困らせていました。 ある空が泣き出しそうな空模様の日、その日も2人は喧嘩をしていました。 「なんで、そんなこというの」 と弟。 「いやなことを「やだ」ていったらだめなの?」 とお兄ちゃん。 すかさず弟は 「じゃあボクもヤダいうの!!やだやだやだ」 といい、やだやだと泣きだしました。 弟はお兄ちゃんが泣かれるのを嫌っていることをしっていました。 「やだやだ、やなの!!」 「やだじゃないよ。かえしてよ!!」 「かえさないの!ぼくのなの」 「かってにとらないでよ、、いつもいつも、かしたらこわすじゃん。このものこわし」 「ものこわしじゃないもん!ゆうくんだもん」 「うそなきものこわし!!だいっきらい」 少しずつ涙がひいてきた弟の目ですがその言葉をキッカケに大粒の涙へと変わっていきました。 「ふぇええええん、うそなきじゃないもんないてるもん」 「わざとないてたくせに。なみだがでてるだけじゃかなしいなみだっていわないんだよ」 「なみだはなみだだよヒック」 「ただのなみだなんてふつうのおみずといっしょだよ。しょっぱいだけのふつうのおみず!!」 弟はそれを聞いた途端、大声で泣き叫びました。 やっとで異変に気づいたお母さんは ドタドタと2人の部屋にやってきて 「こら!!!!なんで泣かせてるの!!おにいちゃんでしょ!!弟に優しくしなさい、よしよしゆうくん大丈夫大丈夫」 と一喝を入れ、弟を抱きしめ頭を撫でてやりました。 それを聞いた、それを見たお兄ちゃんは悲しくなりました。 自分はただ、友達からもらった紙飛行機を大切にしたいだけ。大切にしたいだけなのに。 「こんなに鼻水を出しちゃって。チーンしてスッキリしようね」 弟の鼻をかんだあと、お母さんは言いました。キリッとお兄ちゃんを睨みつけて 「なんでお兄ちゃんなのに優しく出来ないの!!可愛い弟でしょう?」 と。 お兄ちゃんは「なんで」に答えるために 「ゆ、ゆうくんがぼくのたいせつなかみひこうきをぐちゃぐちゃにしようとしたからっ!!だから」 と言いましたが 「そんなもの、また作ればいいじゃない。」 と一蹴されました。 ちがうんだ、それは友達からもらった大切なたいせつなだいじなせかいにひとつのかみひこうきなんだよ、、 そう言いたくても言えません。涙が流れ、言いたいことがふわふわとどっかに行き不満だけが頭の中に残ってしまいました。 「ッ.....ふぇえええ、おかあさんはおとうとのみかたばっか!!ぼくのはなしをひとつもきいてくれないじゃんもうきらい、ゆうくんもおかあさんもだいっきらい」 そう言うとお兄ちゃんはものすごい速さでトイレに引きこもりました。 きちんと鍵をかけて。 いつも「なんで」ばっかり。お兄ちゃんだからってなんでも我慢しなきゃいけないの。僕の心配はしないくせに弟の心配はするんだ。 小さいからなんなんだよ、弟が僕と同じ歳になったらの同じになるの?.......お兄ちゃんと弟はおおきくなってもお兄ちゃんと弟のまんま。ということは同じになんない。 現実をしったお兄ちゃんは、また泣きだしました。 最初に壊されたおもちゃはクマの人形でした。 取り合いのすえ、どちらも負けました。 クマの人形の手足が取れたからです。 どちらも引かずに、「これはぼくのものだ!!」と力一杯にクマの手足を引きました。 急にクマの体重が軽くなり「やったかった!!」と喜びに満ちてクマをみるとそこにはケガをしたクマさんがいました。 弟は泣きました。 お母さんを呼ぶために泣きました。 お母さんはいつものように 「なんで」「お兄ちゃんでしょう?」 とお兄ちゃんばかりを責めました。 その人形はお兄ちゃんのものでした。 自分のものを壊されたのに叱られるなんてと泣きました。 しかし 「お兄ちゃんなんだから泣かないの!!悲しいのはゆうくんでしょう」 と悠くんを叱ってはくれませんでした。 3日後に新しい人形が家にやってきました。 その人形はゆうくんの人形でした。 お兄ちゃんには新しい人形が貰えませんでした。 「なんで」 とお兄ちゃんは問いました。 「もうお兄ちゃんなんだし、お人形なんて女の子っぽいもの好きじゃないでしょう。」 「じゃあ、ゆうくんもお人形いらないじゃん」 「ゆうくんは特別なの。」 「.......へんなの」 帰ってきた答えは、小さなお兄ちゃんにはよく分からない答えでした。 人形遊びは、お兄ちゃんになったらやめなきゃいけないことだけを理解しました。 翌年、弟が1つ歳をとました。 1年前のお兄ちゃんと同じ歳になりました。 お兄ちゃんは弟の人形をぐちゃぐちゃに綿を出して腕と脚を力任せに引っ張りました。 すぐに弟に泣かれ、お母さんに怒られました。 意味がわかりませんでした。 だってお兄ちゃんになったら人形遊びはやめなきゃいけないんじゃなかったの? 弟は誕生日プレゼントを貰った次の日に違う人形がプレゼントされました。 お兄ちゃんはやっとで気付きました。 「あれはお兄ちゃんだけが言われることばなんだ」と。弟は兄とは違うのだ。とも。 クリスマスプレゼントは貰ったその日に壊され、誕生日プレゼントは自分がトイレに行った時に壊されました。 何回も何回も壊されて、その度に泣かれて、お母さんに怒られ、お兄ちゃんは疲れてしまいました。 いつの間にか、お兄ちゃんは弟に自分のおもちゃを取られてもなにも感じなくなりました。 感じてもどうせ、怒られるだけだから。 しかし、今日は何としてでも壊されるのを、取られるのを阻止しなければなりませんでした。 「とらないでよ!!ぼくのなの!!とっちゃや!!」 という弟に 「これはぼくが友達に貰ったたいせつなものだからげない!!」 といい何としてでもまもらなきゃと死守していました。 今日もまた、叱って、慰めて、おもちゃを弟に渡してまた怒られる。 そんなのごめんだ。おもちゃだけは渡さない!!そんな思いからトイレに逃げたお兄ちゃんの気を知らない弟とお母さん達は 「なんで渡さなかったのかしら。お兄ちゃんなんだから渡してくれたっていいのにねぇ?」 「そーだそーだ!ぼくがほしかったのに、おにいちゃんとったー!!」 と呑気な会話をしていました。 日が落ちてきて、弟はトイレに行きたくなりました。 トイレに行くと鍵は閉まっていました。 ドンドンドンドンドン、ガチャガチャとトイレのドアを力一杯叩いてもビクともしません。 .......そういえばお兄ちゃんが中に入っているんだった。 また弟は泣きました。 泣いたらお兄ちゃんは出てくるから。 なみだによわいから。 泣いたらお母さんがくるから。 お母さんによわいから。 「うるさい。どっかいって」 「トイレいきたいの!!でてきてよ」 「もらせばいいじゃん」 「もらさないの!もれるからはやく」 「なにがなんでもでないから」 このままでは、漏らしてしまうと大声で泣きました。 お母さんさえ呼んでしまえばこっちのものだと。 おかあさんはすぐに来ました。 これでトイレに行ける。 「ふぇ、といれにいきたいの、おにいちゃんがでてこないの」 「なんでそんなことするの!出てきなさい」 「やだ」 「やだじゃないでしょう!!」 「ゆうくんなんてもらしちゃえばいいんだ」 「なんでそんなこと言うの!!大切な弟でしょう!!可哀想っておもわないの?」 ガチャっと家のドアが開きました。 お父さんが帰ってきたのです。 お母さんの叫び声で「な、なにがあったんだ!!?」とスーツも脱がずにトイレの前に来ました。 「あなた、ゆうくんがトイレに行きたいっていうのに出てこないのよ。あなたからも言ってやってよ」 「なんでトイレから出てこないんだ?なにかあったんじゃないのか?」 「そんなの知らないわよ。はやく、説得してちょうだい」 「そう言われてもなぁ。.......拓也、なにがあったんだ?お父さんに話してくれないか?」 「おかあさんとゆうくんきらい。」 「?」 「おかあさんとゆうくんどっかいって!!!!」 「こら!!口の利き方に気をつけなさい!!なんでそんなこと言うのよ!!」 「お前はすこし頭を冷やしてきなさい。ゆうくんもお母さんと一緒に隣の部屋で待ってなさい。」 「で、でも、」 「でもじゃないだろ。」 「.......ゆうくん、お母さんと2人でアニメみよっか。」 「う、うん.......トイレ.......」 「もう少し、我慢してね」 ドタドタと2人の足音が消えて数分後。 「もういない?」 「2人ともトイレに行くためにお外にいったよ」 お兄ちゃんは出てきた。 「お父さんの部屋で少しお話しよっか」 「おこらない?」 「理由を話してくれればね。」 お父さんは拓也を抱えて2階の自分の部屋にいった。 「あ、あのね。」 「うん」 「ゆうくんがぼくのおもちゃをとろうとしたの」 「それで?」 「それでね、ぼくはとられたくないからあげなかったの。」 「なんであげなかったの?」 「.......おとうさんもなんでばっかり。いつもいつもみんななんでなんでって。」 「拓也、お父さんがなんでって聞いたのは謝る.......なんて言えばいいのかな。お父さんが聞きたかった「なんで」は、「あげればよかったじゃん」ていう「なんで」じゃなくて「あげれなかった理由」を聞きたいんだよ.......って、これじゃあ結局同じだね。」 「そのおもちゃはたいせつなものだったの。ともだちからもらったとってもたいせつなもの。せかいにひとつだけのぼくだけしかもってないおもちゃだったの、」 「そっか。大切な玩具なんだね。渡したくないよね、大切なものなんだもん」 「だってゆうくん、ぐちゃぐちゃにするもん。ぐちゃぐちゃにしないならかしてあげてたもん。」 「ゆうくんはまだちっさいから直ぐに壊しちゃうもんね。」 「ゆうくんね、ないたの。くれないから。そしたらおかあさんがきてね。「なんで」「お兄ちゃんでしょう」ていうの。ぼくね、ちゃんとりゆうをいったんだよたいせつって、、なのにッ......ふぇ」 お父さんは抱きしめながら肩をトントンと呼吸に合わせる様にやさしく叩いてくれた。 その行為のせいかぼくのなみだは何時になっても止まらなかった。 「きちんといえたのは偉いぞ。拓也。」 「また、つくればいいじゃんっていったのぉお。またつくれるならあげてるもん、なんでいったのにいぃ」 「.......拓也。拓也のために、拓也が俺がいない間でも寂しくないように、世間に冷たい目で見られないようにと思って再婚したんだ。 だけど、それは間違いだったのかもしらないね。 拓也、拓也は俺と一緒、2人は嫌?」 「う、ううん。二人がいい。」 「そっか。ごめんなぁ、拓也.......」 その1ヶ月後に、ふたりは別居した。 俺はお父さんに。 弟はお母さんに ついて行った。 俺は高校生になった。 これは、むかしむかし。俺たちが兄弟だった頃の物語だ。
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