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パトカーで5分ほど走らせると、離島での景色は変わる。港から離れれば離れるほど、家はまばらになってきた。
ほぼ家も見当たらなくなった頃、路肩に停め、石原は携帯電話を取り出した。
「あ、真さん? すみません。僕です。僕。分かります? お久しぶりですね」
「み、陸裕……!」
3年ぶりに聞く真の声は心なしか震えて聞こえた。
「あ、やっちゃいましたね。それやばいヤツです。真さん、オレオレ詐欺に引っかかるパターンですよ」
うっかり真の感情に引き摺られそうになりつつも堪えながら言うと
「あのな、陸裕……。お前、俺の携帯にかけているんだろ? だったら、お前の名前が表示されているのも分かっているよな?」
真がもっともなことを言い返した。
「冗談ですよ」
「冗談だったのか? 分かりにくいな」
「冗談は置いといて」
一呼吸おいて石原は本題を切り出した。
「……ちょっとお願いがあって電話しました」
「お前がそこまで言うのなら、仕方ない。ヨリを戻そう」
「いえ、そんなお願いじゃないです。大体戻すヨリ自体ないでしょ? 僕はマ……」
「マ……?」
言葉に詰まった石原が咳払いを一つする。その後、すかさず
「……コウサンをいただいたんですから。後腐れなし。すっきり」
と言えば
「す……、すっきり……?」
徐々にフェードアウトする真の声。
「ちょっと調べてほしいことがあるんです」
石原が言うと
「何だ?」
力なく真は聞いてきた。
「緒方ケンって人物を調べてほしいんです」
「誰、それ?」
「今、島に来ているのですが……。名前は偽名かもしれません。だけど乗船名簿にもそう書いてあったので、意外と本名なのかもしれない」
「そいつがどうかしたのか?」
「過去に何かしていると思われます。今、僕の方で分かっていることは、年は24。誕生日は1月11日。外見の特徴は身長は190㎝近くの金髪大男で、両耳にピアスが7個。それ以外にも体のあちこちにピアスを付けてます」
「目立つ外見だな。そっちの方が調べがつくのは早そうだ」
「お願いできますか?」
「……陸裕の頼みなら、なんだって聞くよ」
3年前と変わらない真の声に
「……」
一瞬、石原は考えた。
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