04-3.後

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 その日も、夜な夜なケンは石原の元を訪れた。  それも決まって石原が寝入っていると思われる深夜に。  石原は石原で (今夜もケンが頭皮確認に来るかも)  と思うと、おちおち寝てなどいられない。  案の定、ケンは気配を消して隣の石原に忍び寄った。  先日と同じように手のひらでそっと首から頬に触れ、首筋、耳の後ろに移動した。 (な?!)  何を思ったのか、耳から頬に戻ってきた手のひらは、今夜は戸惑いがちに親指の腹で石原の唇をなぞってきた。 (ナニ?!)  心拍数が跳ね上がる。  触れられた部分が熱い。 (ケンは一体ナニしたいのですか?!)  ドキドキという鼓動がうるさい。  思考がまとまらない。  ケンが、はあと大きく息を吐き出すと、いつものスーパーミントグリーンの香りが漂った。 「……」  しばらくした後、不意に石原の額ギリギリに顔が寄ってきた。 (そんなに確認しなくても、あなたと同じ匂いしかしませんからぁ!)  半ば泣き出したいような気持ちを抑えつつ、目を開けられずに石原は固まっていた。  ここで目を開けて、ケンに真意を問いただしてもいいのだろうが、それをするのは何故か憚られていた。 (そのまま、して……ほしいような……)  ケンに触れてほしいような、してほしくないような。  声を上げたら、あるいはここで目を開けたら、ケンは一体どうするのだろうか。 (動揺が過ぎる)  今、声を上げたら、きっと裏返っている。  変な声になる。 (よし、声を出すまい……!)  寝たふり続行を決意した石原は、その後も似たような夜を過ごす羽目に陥った。
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