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(このままでは身がもちません……)
なんの地獄だか天国だか分からない夜が二日ほど過ぎた。
早朝、5時。
石原が爽やかな朝に不似合いな形相で、もそもそと着替えていると
「石原さん、また不機嫌なのか?」
隣で同じように着替えたケンが、覗き込むように尋ねてきた。
「誰かさんのお陰であまり寝られなかったので……」
ぼそぼそと答えると
「怪異現象なんか起こっていなかったぜ」
耳聡く聞きつけたケンが答える。
「なんで知っているんです?」
「だって、それは……隣で寝ているから、な」
親指上げてポーズを決めるケンを
(このやろ)
と睨み返す。
「さっさとゴミ拾い行こうぜ。で、帰りに朝市寄って、朝飯用にアジの一夜干しを買お。な。それで機嫌直せよ」
(一夜干しで僕の機嫌を取ろうなんて……)
と思うものの、気がつくと笑顔になってしまっている。
(む。ケン、やりますね……)
少しだけ、気分が晴れていた。
ケンに宥められるようにして、目の下にクマを作りながらもゴミ拾いの後、一夜干しを添えた朝ごはんを食べ、そして、いつもの立番をしていた頃だった。
「♪♪♪」
胸に忍ばせておいた携帯がメールの着信を知らせる。
石原が携帯を覗くと
(え? 早っ……!)
「志々目真」と表示されていた。
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